宇都宮徹壱ウェブマガジン

「なでしことの距離を縮めた(?)WEリーグ」ちょんまげ隊長ツン シリーズ「私はこう見た! FIFA女子ワールドカップ2023」<2/3>

「この国のスポーツの序列が変わるかも」タカ植松(在豪ライター) シリーズ 「私はこう見た! FIFA女子ワールドカップ2023」<1/3>

 720日に開幕したFIFA女子ワールドカップも、早いもので残り2試合。明日の3位決定戦(スウェーデンvsオーストラリア)、そして20日の決勝戦(スペインvsイングランド)を残すのみとなった。大会がフィナーレを迎えるのに合わせて、当WMでは3日連続で現地観戦した方々へのインタビューを公開。今大会の多角的な検証を試みる。

 第2回のテーマは「なでしこジャパン」。今大会のなでしこは、グループリーグを3戦全勝、決勝に進出したスペインにも4−0で完勝している。その後はラウンド16でノルウェーを下し、12年ぶりの優勝も期待される中、準々決勝で対戦したスウェーデンには1−2で惜敗。結果としてベスト8で大会を終えることとなった。

 そこで、ゴール裏からなでしこの戦いを応援し続けていた、ちょんまげ隊長ツンさんにお話を伺うことにした。ツンさんといえば、日本代表サポーターであり、継続的な被災地支援活動もつとに有名。2011年の女子ワールドカップ優勝が、東日本大震災で打ちひしがれた国民を勇気づけたことが契機となり、ツンさんはなでしこも真剣に応援することとなる。

 そんなツンさん、オーストラリアでのファイナルを観戦することなく、意外な国へと旅立っている。どこに向かっているのかについては、ぜひ当インタビューでご確認いただきたい。なお、文中の写真はZoomのキャプチャを除き、いずれもツンさんからご提供いただいている。(取材日:202387日、オンラインにて実施)

なでしこ人気でどこに行っても「コングラチュレーション!」

──ツンさん、今日はよろしくお願いします。ニュージーランドに到着したのが先月25日ということで、そろそろ2週間が経つわけですが、そちらには決勝まで滞在するんでしょうか?

ツン こっちにいるのはベスト4までですね。実は急遽、カタールに行くことになったんです。ご存じのとおり、来年1月にカタールでアジアカップが開催されるんですが、去年のワールドカップにつづいて、またしても「ファンリーダー」に選ばれまして。

──そうだったんですか! 真冬のニュージーランドから真夏のカタールなんて、それこそ40度以上の気温差があると思うんですが大丈夫ですか? 声もガラガラだし。

ツン 声が変なのは応援しすぎたからです(笑)。で、ファンリーダーなんですが、前回のワールドカップでは、アジアからは日本と韓国とオーストラリアだけだったんです。ところが今回は、タイとかインドネシアとか、アジア各国の有名なサポーターが一堂に会することになるんですね。僕自身、アジアでのサポーター人脈を広げるチャンスですし、今大会から直行するので、女子サッカーの素晴らしさを伝えることもできます。悪い話ではないですよね。だから冬服しか持っていないのに、気温50度のドーハ行きを決めました。

──なるほど。カタールには何度も訪れているツンさんですが、ニュージーランドは今回が初めてでしょうか?

ツン 初めてですね。数え直したら、ここが60カ国目でした。何の先入観もなしに来たんですけど、まず驚いたのが大自然の豊かさ。たとえばネパールだと、大自然の風景と出会うためには23日のトレッキングが必要なんですよ。けれどもこっちだと、南島にあるマウントクック国立公園なんかは、平坦な道を1時間ほど歩くだけで、目の前が大自然なんです。そうかと思えば、どんどん小さくなっている氷河を目の当たりにして、地球の温暖化を実感することもできました。

──なるほど。ニュージーランドの国民性や暮らしについては、どんな印象を持ちましたか?

ツン 日本のような島国で、一回り小さい国土の中に、500万人が暮らしているんですよね。みんな陽気で朗らかで、生活にも余裕が感じられます。すごい金持ちもいないけれど、すごく貧しい人も見かけない。人口減少で悲観的な部分がクローズアップされる、日本の未来へのヒントがここにあるのかもしれません。

 あと、何が素晴らしいかといえば、笑顔とホスピタリティですよ。公共交通機関を利用する時も、スタジアムに横断幕を持って入る時も、みんな100%の笑顔で迎え入れてくれるんですね。ですから、こっちも120%の笑顔で返すほかないんですよ(笑)。

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