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【無料公開】マスコット総選挙は「オワコン」なのか? 10回で終了したAKB48選抜総選挙から考える<1/2>

マスコット総選挙の10年を3つに区分すると

──岡田さんにお聞きしたいんですけれど、マスコット総選挙における「ウチの子を一番にしたい」から「私たちで盛り上げたい!」へのシフトというのは、結果的にAKB総選挙の終焉に影響したのでしょうか?

岡田 AKBの総選挙は2018年が最後だったんですけれど、順位付けが固まってしまったことが大きかったと思います。簡単に言うと、指原莉乃さんが頂点に君臨し続ける状態になってしまったことで、次の世代のために辞退していたんですよね。

──ヴィヴィくんやグランパス師匠が辞退するようなイメージですね(笑)。それではAKBの総選挙って、そもそもなぜスタートしたんでしょうか?

岡田 もともとは、プロデューサーをはじめ作り手が全部決めるものに対して、ファンの方から「こんないい子がいるんだよ」と知ってもらう機会を増やすところからスタートしているんですよね。でも回を重ねていくうちに、上位陣が固定化されていったことに加えて、SNSをはじめ個人の努力でいろいろな発信の仕方ができるようになっていきました。その結果、総選挙で注目されること自体に意味がなくなっていったというのも、間違いなくあったと思うんですよ。

──AKB総選挙は2009年に第1回が開催されて、ちょうど10回目で終わっています。マスコット総選挙も、「本家」から4年遅れることの2013年からスタートして、今年で10回目。第11回があるかどうかというのが、ひとつの分水嶺になりそうな気がします。大場さんは、これまでの総選挙の流れをどう見ていますか?

大場 この10年は、大きく3つの時代に区分できると思います。最初は「話題性の時代」。ベガッ太さんのブログが面白いとか、サンチェが整形したとか、そういった話題性で上位に上がっていったと思うんですね。次が「王道の時代」。グランパスくんとかヴィヴィくんといった、マスコットとしての形状の美しさや可愛らしさがストレートに伝わるマスコットが上位を独占するようになりました。そして今は「サポーター盛り上げの時代」。熱量のあるサポーターの多いクラブが、断然有利になりましたよね。

だじゅうる 2020年のマリノスケがまさにそうでしたよね。今回のマリノス君も中間発表で1位になりましたけれど、もともとサポーターの数が多い上に「ウチの子を押し上げるぞ!」っていうエネルギーが加わったら、これはもう太刀打ちできないですよ。そもそも今の総選挙の仕組みだと、絶対的にJ1勢が強いです。具体名は挙げませんけど、そんなに活動していないマスコットでも、J1クラブだったら20位以内ならわりと入りやすいんですよね。

──そう考えると、J2クラブながら知名度と人気でJ1クラブのマスコットをしのぐヴィヴィくんの存在は、本当に尊く感じられますね。一方で今年の中間発表を見ると、おしなべてJ3クラブのマスコットが苦戦を強いられています。昨シーズンJ2だった松本山雅のガンズくん(7位)を除くと、J3で最高位がFC岐阜のギッフィーで21位ですよ。

だじゅうる そこで下剋上があると、総選挙全体がもう少し盛り上がると思うんですけど、やっぱりJ1との差は歴然ですよね。ヴィヴィくんはある意味「異端」で、ガンズくんも頑張っています。でも、これだけJ1勢が強いと、今日のテーマである「総選挙はオワコン?」という言葉が脳裏にチラつきますよね。

──岡田さんに質問です。AKBの場合、総選挙で優位に立てる条件というものは、どういったものがあったんでしょう?

岡田 さっき大場さんが、マスコット総選挙の10年を3つの時代に区分していましたけれど、AKB総選挙も始まった頃と終わる頃にはまったく条件が異なっていました。始まった当初は、マスメディアでの活動を別にすると、ステージや握手会が主なファンとの接点だったので、そこでの人気が順位に反映されていたんですよね。それが変わっていったのが、指原さんが最初に1位になった2013年くらいだと思います。

 SNSなどを使って、本人の工夫でいろいろな発信ができるようになると、セルフプロデュース能力の高い人が支持されるようになっていきます。もちろん指原さんが、ステージや握手会をおろそかにしているという意味ではありません。それでも、彼女のような発信力のあるタイプの台頭というのは、AKBという枠を超えてアイドル界全体に波及していったように感じています。

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