宇都宮徹壱ウェブマガジン

【無料公開】マスコット総選挙は「オワコン」なのか? 10回で終了したAKB48選抜総選挙から考える<1/2>

 今週は年末企画ということで、2022年にお届けしたコンテンツから蔵出しして、無料公開とすることにしたい。今年の宇都宮徹壱WMでは、識者を集めてワンテーマについて語り合う、座談会形式の企画が目白押しだった。代表的なものを挙げると、以下のとおり。

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 並べてみて気がついたのだが、佐山一郎さんのご自宅をお借りした「歴代サッカー本ベストイレブン」以外、すべてオンラインにて実施されている。コロナ禍によるZoomの普及が、こうしたオンラインでの座談会企画のハードルを思い切り下げたのは間違いない。

 そんな中、今回は2月17日に公開した、Jリーグマスコット総選挙についての座談会を無料公開でお届けすることにしたい。登壇者は、Jリーグマスコットのことばかり考えるブログ」を運営している、だじゅうるさん(写真右上)。グッズデザイナーとしてマスコットとの関わりが深い、大場理惠さん(同左下)。そしてアイドル業界に詳しい、岡田康宏さん(同右下)である。

 2023年の FUJI FILM SUPER CUP は、2月11日に開催されることが決定。ただしマスコット総選挙を開催するかどうか、現時点でのアナウンスはない。2013年からスタートしたマスコット総選挙は、前回が記念すべき第10回。AKB選抜総選挙が10回で終わったことに倣って、なんとなくフェードアウトするのではないか、という憶測も流れている。

 思えばここ数年、マスコットファンの間で「総選挙疲れ」という言葉が聞かれるようになり、「マスコットに順位のノルマを課すのは可哀想」といった意見も聞かれるようになった。FC東京の東京ドロンパが、総選挙への不参加を表明したことも、こうした流れに沿ったものと考えられよう。少なくともマスコット総選挙が、大きな曲がり角に来ているのは間違いない。

 果たして、マスコット総選挙は「オワコン」なのか? 存続するとしたら、どのような点を改善すべきなのか? そしてJリーグは、マスコット文化をどう活用していくべきなのか? 無料公開としてことで、マスコットファンのみならずJリーグのしかるべきポジションの方々にも、ぜひお読みいただきたい。(2022年2月5日、オンラインで実施)

<1/2>目次

*東京ドロンパの総選挙辞退をどう評価するか?

*マスコット総選挙の10年を3つに区分すると

*マスコット界における指原莉乃は誰だったのか

東京ドロンパの総選挙辞退をどう評価するか?

──今年で10回目を迎える、Jリーグマスコット総選挙。その是非とマスコット活用のあり方について、さまざまな分野での知見をお持ちの方々にお集まりいただき、議論を深めていければと思います。まずは岡田さんから、簡単な自己紹介をお願いします。

岡田 サポティスタという、サッカー情報サイトを運営していた、ライター兼編集者の岡田康宏といいます。サッカーとアイドルが趣味で、最初はサッカーのほうが仕事になったんですけど、そのうちアイドルの仕事が増えていって、ここ5~6年はアイドルグループの運営をメインでやっています。よろしくお願いします。

大場 大場理惠と申します。主にJリーグのグッズのデザインと制作をさせていただいています。わかりやすいところでいうと、だじゅうるさんの後ろに映り込んでいるぬいぐるみなんかもそうですね。マスコット関連のグッズ制作にも携わってきているので、今回お声がけいただいたと認識しています。よろしくお願いします。

だじゅうる マスコットのブログを書いている、だじゅうると申します。これまでインタビューを受けたことがない人間ですので、そこはまず強調させていただきます(笑)。現在は京都在住ですが、岡山出身なのでファジアーノ岡山とファジ丸を応援しています。2010年からマスコットに興味を持つようになって、ブログで発信するようになったのは2015年から。今日はマスコット好きサポーター代表として、お話できればと思います。

──ということで今回は、三者三様の立ち位置から、それぞれが考える「マスコット総選挙の是非」について論じていきたいと思います。この中で現在、サッカーとの距離感が最も遠そうな岡田さんに質問です。マスコット総選挙というものは、毎年チェックはされているんでしょうか?

岡田 何となく、やっているのは知っていました。ちゃんとJリーグがオフィシャルでやっているとは思わなくて、ずっと勝手連で盛り上がっていると思っていたんですよ(笑)。ですので「意外としっかりやっているな」というのが正直な印象です。

──やはりJリーグファン以外からの視点は重要ですね(笑)。今年の総選挙は無事に行われる予定で、ほぼすべてのマスコットが試合会場に集合するようです。けれども去年はコロナの影響で、総選挙は行ったものの結果発表のみ。今年の実施に関しては、かなり流動的だったとの情報もあったのですが、大場さんは何か聞いています?

大場 おそらくJリーグも、ぎりぎりまで迷ったと思うんですよ。去年の12月20日くらいだったと思いますが、とあるクラブさんと商談した時に「まだ何も聞いてない」とおっしゃっていたんですね。全国からマスコットを集めるのか、もふチケを出すのか、まったく決まっていなかったみたいです。感染者の推移がどうなるのかも、非常に予測がしづらい状況だったというのもあったと思います。

──結局、総選挙の開催が発表されたのが1月17日。同日、FC東京のドロンパが参加辞退を発表しました。この影響については、どうご覧になっていますか?

大場 私はいい傾向じゃないかって思いました。もちろん、参加するクラブさんを批判するわけではないですし「ウチの子を一番にしたい」と頑張っているサポーターさんがいてもいいと思うんです。それこそ数年前だったら「神7に入りたい!」とか「ベスト3を目指す!」とか、みんな鼻息が荒かったですよね。

 けれども最近の推し文化って、順位よりも「私たちで盛り上げたい!」という気持ちのほうに重きが置かれているように感じます。ですからそっちも素敵だし、FC東京のようなスタンスも、私はありだと思います。

だじゅうる 大場さんがおっしゃられたように、最近のマスコット総選挙の傾向として、結果よりも推すこと自体を楽しもうっていう空気が、より明確になったように感じます。そんな中で「無理に参加しなくてもいい」という方向性を、ドロンパが示したことは大きかったと思います。もちろん、参加するマスコットもいてもいい。これから回数を重ねることで、マスコットの参加数は減っていくかもしれないけれど、それを飲み込んだ上で続ける総選挙であっても、いいのかなって思います。

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