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【無料公開】選挙という狂気と戦えなかった自民党 もしも広瀬一郎が静岡県知事になっていたら<3/4>

【無料公開】自民党が推薦した理由と立候補の条件 もしも広瀬一郎が静岡県知事になっていたら<2/4>

「選挙に強い=政治活動に強い」ではない

──いよいよ選挙活動がスタートするわけですが、広瀬さんがFacebookにお書きになっていた「選挙は人を狂わせる」という言葉がすごく気になりました。具体的に、どのあたりが狂っているんでしょうか?

広瀬 はっきり言って、狂っていくよ。だって人通りの多い駅前で「はい、広瀬さん。そこで演説してください」って、普通の神経ではできないでしょ。朝の630分から駅前で握手しろって、できる? あるいは夕方、酔っぱらい相手に「よろしくお願いします!」って、できる? 普通じゃないでしょ。僕は狂わずにそれができたけど。

──広瀬さんご自身は、大学でずっと何百人もの学生を前に講義されていましたから、話すこと自体はそれほど抵抗なかったと思うのですが。

広瀬 まあね。1コマ90分、年間で150回くらい講義しているのと一緒だからね。それを7年間、だいたい1000回くらいの講義をしているわけ。人前で話すことについてはなんら問題ない。これが講演でも、最初につかみを入れるとか、最近のネタを入れるとか。これをやりすぎちゃうと、なんて軽い人なんだろうと思われるけど(笑)。ただし演説と、講義や講演の違いというのが、最初はわからなかったね。

──どのあたりに一番の違いを感じました?

広瀬 内容を聞かせようと思っちゃいけない。声が大きいとか、元気が良いとか、発言がきちんとできるとか。

──要は相手に良い印象を伝えるとか、名前を憶えてもらうとか?

広瀬 うーん……なんだろうね。たとえば「この人はこんなに私たちのことを考えてくれている」とか「なんて礼儀正しい人でしょう」とか。とはいえ、平日の昼間に演説を聴いている人ってご高齢の人たちですよ。そういう人たちに「メタンハイドレート」って言った瞬間に「なんでこの人、横文字を使ってるの?」ということになる。だから演説がわかるまでは、本当に苦労した。なんでこの歳になって、人からガタガタ言われなきゃならんのかって。

──そうでしょうね(苦笑)。

広瀬 シャレなんか言おうものならね。616日が投票日で「16で(広瀬)イチローの日! 皆さまに最後のお願いに参りました!」なんて遊説していたわけだけど(笑)。

──その点、現職の川勝さんはどうだったんでしょう?

広瀬 あの人は、聴衆を見た瞬間に何を届けるべきか、動物的にわかる。その意味では天才的なポピュリスト。ただし権力奪取が「目的」だから、それが「手段」である僕なんかより無害なんだよね(笑)。知事になることが目的なのでは、まったく太刀打ちできない。

──今の政治家で演説が上手い人って、広瀬さんから見て誰だと思います?

広瀬 石破茂と野田聖子が上手かった。ちゃんとロジカルで、しかも聴かせられる。この人は礼儀正しい、話がわかりやすい、声が出ているなって伝わる。細かいセンテンスを使わないとか。ただ、ここで問題なのが、選挙に強い人間イコール、政治活動に強いというわけではないということ。選挙の能力と政治の能力は違うんだよね。

──となると、やはり日本の選挙制度そのものに問題がある?

広瀬 だからアメリカ大統領選挙は2年間もかけるんだよね。選挙に強いやつを選んだって、意味ないでしょ? あれだけ巨大な権力が集中するポストなんだから、やっぱり2年くらいは必要。そこはアメリカのリスクマネジメントだよね。

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