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【無料公開】ちょんまげ隊長ツンさん「最後のお願い」 「トモにカタールへ」に協力してください!<1/2>

 カタールで開催されるワールドカップ開催まで60日を切った。ドイツではキリンチャレンジカップ2試合が行われ、ここで日本代表の最終メンバー26人が絞り込まれる。そんな中、今週は今年7月に掲載した、ちょんまげ隊長ツンさんが語る「カタール観戦術」を、最新情報にアップデートして無料公開することにしたい。

 今大会、FIFA公認ファンリーダーに任命されたツンさんは、組織委員会から東アジア(日本・韓国・中国)からただひとり招待され、昨年12月と今年6月にカタールに滞在。私のサッカー仲間の中で、最も現地観戦情報を持っているのがツンさんである。具体的には、出入国に必要なアプリや現地で使用するSIMカード、さらにはスタジアムへのアクセスや宿泊事情などなど。現地観戦を予定している人にとっては、いずれも有益な情報ばかり。それらを無償で提供する、ツンさんの太っ腹ぶりには敬服するほかない。

 そんなツンさんが、またしても「ピンチ」に見舞われている。8年前の「トモにブラジルへ」、4年前の「トモにロシアへ」につづいて、被災地の学生たちにワールドカップを体感してもらうプロジェクト「トモにカタールへ」。そのためのクラウドファンディングを立ち上げたのだが、なかなか人とお金が集まらないそうだ。

 『トモにブラジルへ』では宮城県の牡鹿半島の子供たちを、『トモにロシアヘ』では福島県の南相馬の子供たちをワールドカップに招待しました。今回の『トモにカタールヘ』は集大成として、5つの被災地の学生をカタールに連れていきたいんです。もうすぐ僕も還暦です。被災地の若い世代をワールドカップに招待するのは、おそらくこれが最後になるでしょうね。

 東日本大震災をきっかけに始めた、ちょんまげ隊のボランティア活動も今年で12年目。最近は東北だけでなく、豪雨被害のあった愛媛や熊本でも被災地活動を続けている(今月も新潟北豪雨災害の支援で、泥出しに3回も出動している)。被災地支援と日本代表の応援は、ツンさんの行動原理の両輪。それゆえ「被災地の子供たちをワールドカップに招待する」活動は、必然だったのかもしれない。

 われわれ凡人には思いつかない、大風呂敷を広げては「大変だ、大変だ」と東奔西走して協力者を募り、いつもギリギリのところで実現させてしまうツンさん。2014年の「トモにブラジルへ」しかり、18年の「トモにロシアへ」しかり、16年に完成した映画『MARCHまたしかり。いずれも奇跡のようなストーリーを経て、それぞれのプロジェクトを完結させてきた。今回の「トモにカタールへ」について、まずはツンさんに概要を語ってもらおう。

 今回、カタールに招待したいのは、宮城県女川町、愛媛県宇和島市、そして熊本県球磨村在住の学生から1名ずつ。支援が多く集まるようでしたら、福島県南相馬市、岡山県倉敷市真備町、宮城県石巻市にも輪を広げたいです。なぜバラバラな土地から招待するかというと、復興の状況が異なる学生を交流させながら、最近の被災地の子には『復興への道筋』を体感してもらいたいから。逆に、女川など復興が進んでいる地域の子には、今でも仮設住宅暮らしをしている地域のことを知ってほしいんですよ。

 実は私自身、ツンさんの案内で何度か被災地を訪れている。そこで感じるのは、被災者の人々は支援する人々との出会いはあっても、異なる土地の被災者の交流する機会は非常に限られているということだ。ここで出会った少年少女たちが、交流を通して自分たちの置かれた状況を認識し、復興への道筋を客観的に理解することになれば、極めて意義深いプロジェクトになるだろう。そんな交流の場を、4年に一度のワールドカップに設定することにも、ツンさんなりの戦略がある。

 ワールドカップって、世界のつながりだったり、多様性や異文化だったりを短期間で体験できる格好の機会ですよね。そういう体験をしてもらうと同時に、子供たちには被災地と世界を結ぶアンバサダーの役割を果たしてもらいたい。もちろん、カタールで見てきたものや感じたことというのは、個人的なものにはとどまりません。それぞれの地元や学校に持ち帰って、体験報告会をしてもらうことで、行けなかった友人や仲間にも共有してもらいます。

 一方でワールドカップには、世界中のメディアが開催国に集まる。このタイミングを活用して、被災地からの感謝や復興の現状を、世界を通して日本に伝えるのもまた「トモにカタールへ」に課せられたミッション。「そうすることで、無関心の壁を壊したいんです」とツンさんは力説する。

 旅程は11月21日から28日まで6泊8日。航空券や宿泊費、食費や保険などを含めて、ひとり52万円を見込んでいる(やや割高に感じられるのは、燃油代の高騰や円安の影響、そしてコロナ対策によるものだ)。これにクラファンの返礼品や手数料、前回と同じ旅行代理店の添乗員に依頼するとして、旅費以外の費用は127万円。さらに、2会場でのパブリックビューイングのライセンス料を50万円と見込んでいる。

 仮に4人を招待した場合、総額は385万円(添乗員を頼まない場合、もう少し安く抑えられる)。企業スポンサーやチャリティーイベントも計画しているが、メインとなるのはクラファンでの個人スポンサーだ。

 コロナや戦争で世界中が大変です。物価高騰や円安で、国内にも困っている人もたくさんいます。でも、自分自身が大変な時こそ、誰かの関心につながるための『伝える支援』や『知る支援』を続けていく意義がある。そう、ちょんまげ隊は考えています。

 サッカーファミリーに向けて、こう訴えかけるツンさん。カタール大会開幕まで、ついに2カ月を切る中、焦る気持ちを抑えながらこう続ける。

 普段は僕ら、泥出しとか炊出しとか地道な活動をしていますが、4年に一度だけ大きなアドバルーンを打ち上げることで、被災地の人たちに『皆さんのことを忘れていませんよ!』って伝えていきたいんです。この企画が、決して万人受けするものではないことは、8年前から承知しています。それでも、サッカーファミリーの皆さんに『トモにカタールへ』のご協力を呼びかけたいと思います!

 当WMは今回、より広く関心を集めるべく、ツンさんが持っているカタール観戦情報を無料公開とさせていただいた。その心意気に響くものを感じたら、ぜひツンさんの「最後のお願い」に応えていただきたい。クラファンの受付はこちらから。

※TOP写真以外はすべてツンさん提供

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