宇都宮徹壱ウェブマガジン

「ビッグイベントは儲かる」というロジックの終焉 東京五輪の汚職事件をひとりの書き手として考える

 ここ2週間、取材先での備忘録的なコラムが続いた。今回は久々に、業界ネタで書かせていただく。サッカーの話とは直接関係ないし、いささか業界批判めいた話も出てくる。それでも最近、ずっとモヤモヤ思っていたことなので、きちんと文章に残しておこうと考えた次第。ご理解いただければ幸いである。

 先週の水曜日、KADOKAWAの角川歴彦会長が、東京五輪汚職事件の贈賄容疑で逮捕された。個人的には二重の意味でショックである。ひとつは、誰もが知る大手出版社の会長が逮捕されたこと。そしてもうひとつは、贈収賄容疑の理由が「スポーツ」に関連していたこと。出版とスポーツという、自分の仕事の領域である2つの業界が、結託して起こした不祥事ゆえの衝撃であった。

 収賄側の高橋治之容疑者は、電通の常務取締役だった時代に一度だけ取材したことがある。今から18年も昔の話だ。インタビューの中で、クライアントに関する悪口がけっこう出てきて「どこまで書いていいのだろう」と思っていたら、その日のうちに「●●●の悪口は全部オフレコでお願いします」と本人から直接電話があった。「ドン」と呼ばれる人も、意外と小心な面があるんだな、とその時は思った。

 贈賄側の角川容疑者については、まったく面識はないものの、構成として関わった『前だけを見る力』の版元はKADOKAWA。打ち合わせで訪れた本社ビルが、ニュース映像にどーんと登場した時は、何とも言えぬ重苦しい気分になった。お世話になった編集者は今、どんな心持ちでいるのだろうか。

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