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チームMURAIが振り返る「Jリーグとコロナの戦い」 『異端のチェアマン』出版記念イベントより<3/3>

チームMURAIが振り返る「Jリーグとコロナの戦い」 『異端のチェアマン』出版記念イベントより<2/3>

すべてが「天日干し」でつながっていた(当時の)Jリーグ

 さっき村井さんが「2020年にオンライン会見を71回開催した」って言っていたじゃないですか。皆さんは会見中でのチェアマンしか知らないと思いますが、会見直前の村井さんって、まったく違う表情を見せるんですよね。

佐伯 いつもは柔和で落ち着いていらっしゃる村井さんですが、ピリッとなる瞬間というものがあって、それは日々の会議や議論ではなく会見直前の打ち合わせなんです。誰が何をどこまで話すのか、最後に確認する時は村井さんの目つきが変わるんですよ。私はその変化を興味深く観察しながら「なぜなんだろう」ってずっと思っていたんです。

村井 「観察」というと、何だか自分がアサガオになった気分になりますね(苦笑)。何かわかりましたか(笑)?

佐伯 2年間、ご一緒させていただいて理解できたことがあります。それは村井さんが、Zoom画面の向こう側にいるメディアのさらに向こう側に、ファン・サポーターや一般の市民や国民の存在を意識されていたということです。会見では、正しい情報を正確に伝えることが第一ですから、中途半端なことは言えないし、誇張や隠し事も絶対にできません。会見直前の確認作業で、村井さんの目つきが変わるのも当然ですよね。

村井 今のお話からもわかるように、佐伯さんはJリーグの理事でもあると同時に、遠く離れたスペインからJリーグを客観的に観察できる立場にあったんですよね。世界中がコロナ禍に苦しんでいた当時、佐伯さんはJリーグをどう見ていたんですか?

佐伯 私がJリーグの理事を正式に拝命したのが2020年の312日でした。その2日後にはスペインで外出禁止令が出て、外を歩いている人には問答無用で500ユーロの罰金が取られるようになったんです。世界中が生きるのに必死になる中、オンラインでのコミュニケーションというのは、良くも悪くも冷静に人や組織を観察できることに私は気付きました。

 それでわかったのが、Jリーグって私が想像していた以上に、グローバルでオープンな組織だったということ。最初に私がイメージしていたのは、日本の大きな会社にありがちな、権威主義的で閉鎖的で制限が多い組織だったんです。ところが実際には、スペイン以上に開放的でラテン的な気質がある組織だったので、とても驚いた記憶があります。

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