チームMURAIが振り返る「Jリーグとコロナの戦い」 『異端のチェアマン』出版記念イベントより<2/3>
■「フットボールだけではない」佐伯夕利子の貢献
村井 佐伯さんは在スペインのまま、理事の仕事を続けてもらっていたじゃないですか。時差のことを考えると「佐伯さんは太陽を見ない生活を続けているのではないか」って、ちょっと不安だったんだけど。
佐伯 夏は7時間、冬は8時間の時差なので、朝の8時スタートの会議だと午前0時とか1時くらいですよね。会議が終わったら明け方、ということもよくありました。当時は連日、10時間から12時間くらいオンライン会議が詰まっていたので、全日程が終了するのは現地時間で昼過ぎとか夕方前くらい。そこから眠ろうとしても、なかなか寝付けません。コンディションの維持には苦労しましたけれど、それでも苦ではなかったです。むしろ楽しい2年間でした。
原 佐伯さんって、カウンセリング能力も高いじゃないですか。だからJリーグの職員とか、あるいはJクラブの関係者から、よく相談を受けていましたよね。もちろん現場レベルなんかで、スペインやビジャレアルの事例についての質問もあるんだけど、個人的な仕事の相談にもけっこう耳を傾けてくれていました。
村井 物理的には最も遠く離れているのに、職員との1on1も積極的に行ってくれていましたよね。しかも自分の部署だけでなく、他の部署のメンバーやJクラブの関係者の相談にも乗っていたじゃないですか。それだけ周囲から信頼されていて、なおかつコミュニケーション能力が高いのはわかるんだけど、どうしてそこまで対応できるのか不思議だったんですよね。
佐伯 決して面倒見がいい方ではないと思うんです。ただ私の場合、人に対しての好奇心は強いほうだと思っていて、自分が知らない領域での知識がある人とか、自分が知らない背景を持っている人なんかに、ものすごく興味があるんです。ですので、私の管轄部外のまったく遠いところから「1on1にしてください」と言われることって、本当に光栄なことだし、むしろ私のほうこそ貴重な経験をさせていただいてありがたかったです。
村井 佐伯さんが僕らにもたらしてくれたことって、本当にいっぱいあったんですよね。原さんも僕も、どこかでとっ散らかることがあるんだけど、佐伯さんはいろんな人たちをぐっと近づけてくれる吸引力があったんですよ。
ヨーロッパでの知見についても、惜しみなく僕らに開示してくれました。印象に残っているものを挙げると「休息の科学」。トレーニングや強化ばかりが重視されている中、佐伯さんから休むことの大切さについて、実行委員会で30分くらい説明してもらったんです。それが、ものすごく新鮮で。
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