発売直前『異端のチェアマン』を会員限定で公開 プロローグ されどJリーグは生き残った<3/3>
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【出演】村井満(前Jリーグチェアマン)、原博実(前Jリーグ副理事長)、佐伯夕利子(前Jリーグ理事)、宇都宮徹壱【MC】日々野真理
※全席自由席でご入場は前売券の整理番号順となります。12/2現在、7割程度は埋まっておりますので、お早めに!
(前売券が完売した場合、当日券の販売は未定です)
■村井チェアマン時代の8年間で何が変わったのか?
かなりの回り道となってしまったが、以上が「異端のチェアマン」誕生前夜となる、2013年当時のJリーグの状況である。
Jクラブの数を増やし続けたものの、人気は上向かない上に、収入とメディア露出は減少。加えて「2ステージ制」導入決定で、ファン・サポーターの不信感は増大していた。20周年をのんきに寿ぐ余裕など、実はまったくなかったのが、当時のJリーグであった。
一方で、チェアマンに求められる資質や役割もまた、大きく様変わりしていた。少なくとも、チェアマンが(文字通り)深々と椅子に腰を落ち着けて、優秀かつ実務に長けた理事に「良きに計らえ」で済ませられた時代は、すでに終わっていた。これからはチェアマン自らが最前線に立ち、自らの責任をもって決断しなければならない。
そんな混迷の時代に、Jリーグは突入していくこととなる。
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本書を上梓した2023年は、Jリーグが開幕して30周年に当たる。
今から30年前、1993年といえば平成5年。この年、皇太子徳仁親王と小和田雅子(のちの天皇・皇后)の婚姻が決定し、細川護熙を首班とする連立内閣が発足して自民党が下野し、日本代表が土壇場でワールドカップ初出場を逃した「ドーハの悲劇」もあった。
そんな1993年の5月15日に、Jリーグは華々しく開幕。当時、社会人2年目だった私は、国立競技場での開幕戦を自宅でTV観戦していた。
それから4年後、私はフリーランスの「写真家・ノンフィクションライター」となり、国内外のフットボールを取材しては、写真と文章で表現する活動を続けてきた。
そんな私が今回、テーマに選んだのが「Jリーグ」。ただし「ゲームとしての」ではなく「ガバナンスとしての」Jリーグである。よって、試合の描写は最小限にとどめ、自分にとって未知の領域だった組織論や経営論に、果敢なアプローチを試みている。
Jリーグのガバナンスは、村井チェアマン時代の8年間で劇的に強化された。結果として組織内のみならず、Jリーグのパブリックイメージそのものが大きく変わることとなり、そのプロセスに着目するようになったのが、そもそもの執筆のきっかけである。
村井がチェアマンに就任する以前、Jリーグのパブリックイメージはどのようなものだったのか。まずは開幕直後における、Jリーグのパブリックイメージから。
・アマチュアだった国内リーグがプロ化されたことで競技レベルが向上した。
・メディア露出が増え、競技人口増加につながった。
・プロ野球の寡占状態にあった日本のスポーツ界に新しい風を起こした。
・それまでプロスポーツがなかった地域に、新たなエンターテイメントが生まれた。
ところが夢のような時代は、わずか2年ほどで終焉を迎える。
開幕5年目の1997年には、平均入場者数が過去最低となり、TV中継の数も目に見えて減少。さらに翌98年には、景気後退の影響を受けて、横浜マリノスと横浜フリューゲルスの合併が発表される。新たに「横浜F・マリノス」というクラブが生まれるが、それは「オリジナル10(Jリーグ開幕時に名を連ねた10クラブ)」だったフリューゲルスの消滅と同義であり、まさにJリーグの危機を象徴する「悲劇」であった。
その後、日本代表を中心とするサッカーブームが到来。Jリーグも持ち直しに成功したが、かつての社会現象的な注目を集めるには至らなかった。開幕から20周年を迎えた、2013年当時のJリーグのパブリックイメージは、およそこんな感じ。
・地上波での中継がなくなり、ニュースバリューが極端に低下。
・日本代表が結果を残しても、入場者数アップにつながらない。
・ファン・サポーターの新陳代謝が進まず、入場者数の平均年齢は年々上昇。
・スター選手が誕生しても、国内で知名度を得る前に海外流出。
開幕時の勢いはとうに失われ、エンターテイメントとしての話題性にも乏しく、さらには深刻な経営危機にも直面。まさに八方塞がりの状態で「2ステージ制」を選択せざるを得なかったのが、当時のJリーグをめぐる状況であった。
そこに「異端のチェアマン」が登場する。
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