宇都宮徹壱ウェブマガジン

財務目線で振り返る2010年以降のJリーグの歩み シリーズ「Jリーグ現代史」大河正明の場合<2/2>

財務目線で振り返る2010年以降のJリーグの歩み シリーズ「Jリーグ現代史」大河正明の場合<1/2>

2ステージ制撤廃とDAZNは「異なるレイヤーの話」

 2015年と16年の2シーズンだけ実施された、J1リーグでの2ステージ+ポストシーズン制について、今でもサッカーファンの間で大きく誤解されていることが2点あるように感じている。ひとつは「2ステージ制はDAZN(当時はパフォーム)との契約が決まったから廃止された」というもの。そしてもうひとつは「村井チェアマンが2ステージ制導入を決定した」というものである。

 第1の誤解については、以前のインタビューで村井が「2ステージ制の廃止とDAZNは、実は異なるレイヤーの話なんです」と、以下のように説明している。

「2016年はACLのスケジュールが変更になったことで、J1のレギュラーシーズンを11月3日で終えなければならなくなったんです。CS(チャンピオンシップ)に出場できなかったクラブのサポーターは、11月上旬から2月の下旬までずっとサッカーを楽しむことができなくなってしまう。4カ月間ですから、1年の3分の1ですよ」

 実行委員会でも「2ステージ制を続けていくことは、日本サッカーのために良くないのではないか」という議論となり、2ステージ制の廃止が決まった。もちろん1ステージ制に戻すために、財政基盤の安定に向けたさまざまな努力があり、その延長線上にDAZN(マネー)があったのは事実。しかしながら、そのことと2ステージ制の廃止は、村井が言うところの「異なるレイヤーの話」であった。

 第2の誤解については、2ステージ制導入が決まったタイミング(2013年9月17日)が、村井のチェアマン就任以前であることで説明がつくはずだ。もっとも、議論の場となったJリーグ戦略会議には、村井は社外理事として参加している。当時の彼のスタンスについて、大河はこんなことを思い出してくれた。

「村井さんは『2ステージ制は王道ではない』という考え方。それは僕や中西なんかも同じでしたけれど、村井さんは『いっそエンタメ性に振り切るんだったら(J2)降格もプレーオフにすればいいじゃないか』みたいなことを言っていましたね。その真意はわかりませんでしたが、最終的には受け入れざるを得ないという感じでした」

 それから4カ月後の2014年1月31日、村井は第5代Jリーグチェアマンに就任。新チェアマンとほぼ同世代(1歳上)で、同じくサッカー以外の世界から飛び込んだ大河にとり、当時の村井の心情は察するに余りあるものであったという。

「サッカーのため、Jリーグのためだったら、おそらく命を懸けるくらいの覚悟はあったと思います。のちに僕自身、Bリーグチェアマンを拝命する時には、当時の村井さんの覚悟を見習おうと思いましたよ。ただ村井さんの場合、すでに僕なり中西なりがいたので、自身では決断しづらい状況があったのかもしれないですね」

(残り 2387文字/全文: 3621文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

日本サッカーの全てがここに。【新登場】タグマ!サッカーパック

会員の方は、ログインしてください。

1 2
« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ