宇都宮徹壱ウェブマガジン

サッカーのノンフィクションが認められるために ロング・アフターワード(長いあとがき)<8/8>

3カ月もしたら、だ~れも『ムライ』のことなんか覚えちゃいないさ」と、退任を目前にしたある日、村井さんはそう仰いました。

歴史というものは「記録したものだけが記憶される」といいます。

言うまでもなく、村井さんのご功績は日本スポーツ界の歴史として刻まれなければなりません。

村井さんの8年も、記録されなければ人びとには記憶されないのだろうか……

そんな私の不安を、今回こうして宇都宮さんが『異端のチェアマン 村井満、Jリーグ再建の真実』(集英社インターナショナル)の出版という形で払拭してくださいました。

村井さんの軌跡をひとつひとつ丁寧に言葉を紡ぎながら刻むように「記録」して下さった宇都宮さんに、いちサッカーファンとして心から感謝申し上げます。

 元Jリーグ理事であり、ビジャレアルCFのフットボール・マネジメント部で活躍されている、佐伯夕利子さんのブログ(1110日更新)からの引用である(参照)。こちらこそ「著者として心から感謝申し上げます」と申し上げたい。

 佐伯さんのブログでは、私の著書だけでなく、127日の出版記念イベントについても、ご紹介いただいている。当日のトークイベントでは、前Jリーグチェアマンの村井満さん、元副理事長の原博実さんに加えて、佐伯さんにも登壇いただくことになった。なんと、わざわざこのイベントのためだけに、一時帰国していただけるという。

 最初、その話を聞いたとき「さすがにそれは申し訳ないです!」とお伝えした。けれども「感謝の気持ちですから」という理由だけで、佐伯さんは今回のイベントへの参加を表明。彼女の心意気には、もはや「著者冥利に尽きる」という言葉が軽々しく感じられるくらい、深い感謝の念を抱くほかない。

 そんな彼女の心意気に報いるには、このイベントを盛り上げるのが一番。村井さんや原さんもさることながら、スペイン在住の佐伯さんとリアルで触れ合える機会は、極めてレアだ。すでに国内のシーズンも(天皇杯決勝を除いて)終了しているので、より多くのフットボールファンのご来場を期待したい。チケットのご購入は、こちらから。

 さて、8月からスタートした当連載「ロング・アフターワード(長いあとがき)」も、最終回となる第8回を迎えることとなった。連載の第1回で、私は《どういう着地点になるのかは見当がつかない。時おり進捗を織り交ぜながら、単なる内輪話に終わらないようには留意するつもりだ。》と書いている。

 けっこう内輪話が続いたような気もするが、少なくとも着地点はしっかり見据えている。この最終回では、初稿を書き終えた今年5月から、完全に著者の手を離れた10月までの半年を振り返る。そして最後に、自身の集大成となる作品を世に送り出すにあたり、書き手としての覚悟をWM会員の皆さんに開陳することとしたい。

(残り 4309文字/全文: 5464文字)

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