村井チェアマン時代のJリーグを描こうとした理由 ロング・アフターワード(長いあとがき)<3/8>
最近、ずっと気になって仕方がないことがある。あの「ジャニーズ事務所性加害事件」のことだ。すでにさまざまなメディアで語られていることなので、事件そのものについてここで多くを語る必要はないだろう。
芸能界にはとんと疎い私だが、たのきんトリオ(田原俊彦、近藤真彦、野村義男)はドンピシャ世代だし、フォーリーブスが出演していた「カリキュラマシーン」もリアルタイムで視ていた。そのフォーリーブスのリーダーだった、北公次さん(故人)の暴露本『光GENJIへ』が出版されたのが昭和末期の1988年。購入こそしなかったものの、書店で立ち読みしているうちに気分が悪くなったことはよく覚えている。
なぜこんな話から始めたかというと、BBCの報道ドキュメンタリーが発端となって4時間に及ぶ記者会見に至るまでの後手後手感が、非常に気になって仕方がなかったからだ。初動の遅れと危機管理能力のなさ、人権やハラスメントに対する認識の低さ、一般社会や常識との認知のズレ、問題の先送りと現状維持への固執、そして危機管理能力とスピード感の絶望的なまでの欠如。
スキャンダルそのものは、確かに異常ではある。けれども、それが明らかになって以降の対応の不味さというものは、決してジャニーズ事務所だけの問題でないようにも感じる。その一方で、これとまったく真逆の対応に徹した組織も、私は知っている。皆さん、よくご存じのJリーグ──。より正確を期するならば、前チェアマン時代のJリーグである。
現在は日本バドミントン協会の会長である村井満さん。この人が第5代Jリーグチェアマンだったのは、2014年から22年までの8年間である。一般的に「Jリーグの高度成長期」とも言える時代であったが、何度かピンチに見舞われることもあった。
就任早々の2014年には、人種差別的なメッセージが掲出された「JAPANESE ONLY」事件があった。2015年には悪名高い「2ステージ(+ポストシーズン)制」が導入されてファンの不評を買った。その2ステージ制を2年で終わらせたDAZNも、2017年のサービス開始時には配信トラブルが発生。同じ年には、当時の常務理事のハラスメント問題が発覚した。そして極めつけは、2020年の新型コロナウイルス感染拡大。結果として、この年のJリーグは4カ月にもわたる中断を余儀なくされることとなった。
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