【無料公開】知事選とAKB総選挙は何も変わらない もしも広瀬一郎が静岡県知事になっていたら<4/4>
■知事選は「殿様選びゲーム」だった?
──私が今回の選挙結果を知ったのは、日本代表の親善試合が行われたドーハから、コンフェデレーションズカップが開催されるサンパウロの空港に到着した直後でした。周りの同業者の中にも、広瀬さんを応援している人が何人かいたので、非常に残念だったのですが、それにしても予想以上の大差でしたね。
広瀬 僕もこんなに負けているとは思わなかった。34万対108万。ダブルスコアならぬ「トリプルスコア」だよ。
──当初は「自民で保守だから有利」という話もあったのですが、ぜんぜん違ったわけですね。敗因を挙げるとすれば何ですか?
広瀬 まず、ルールが違った。ゲーム理論で言うと「電通が勝つなら、その市場におけるルールって何なの?」とか、「ベストセラーを書くとなった時、そのルールって何なの?」とか、それを見つけることがゲーム理論なわけ。僕はね、知事選というのは結局のところ「殿様選びゲーム」だとわかった。
──「大統領」ではなく「殿様」だったと。
広瀬 そう。たとえば先日、富士山の三保の松原が逆転で世界文化遺産に決まったでしょ。そしたら、涙ながらに電話で報告している川勝知事というのがメディアに露出するわけ。僕はそれを見て「静岡県民はこれを見て『なんて良い人なんだろう!』って思うんだろな」って考えた。川勝さんというのは、殿様であり「癒し」。平民は実務能力じゃなくて、癒しを求めているんだなって。
──それって「殿様」というより、マスコットじゃないですか(笑)。
広瀬 それでさ、その日の夜に大河ドラマの『八重の桜』を久々に見たのよ。白虎隊が出撃します、若いやつを家老職に登用します、藩主自ら出撃します。でも、この3つのどれを取っても戦況は何ひとつ変わらない。何も変わらないんだけど、そのつどみんな感動に打ち震えるわけ。知事選も一緒。殿様選びをしているんだなと。領民が一番大好きな殿様選びをしているわけ。
──再選が決まった時の、川勝さんのメディア対応はどんな感じだったんですか?
広瀬 興奮していたね。その時に「メタンハイドレートの話をどう思いますか?」って質問があったんだけど、何て答えたと思う?「メタンですか? メタンガスは爆発して危ないんですよ」。
──(爆笑)。
広瀬 ところが(静岡に暮らす)ウチの妹は「川勝さんはすごいな」と思ってしまう。それを見た静岡県民の99.99%は「メタンガスは危ないんだ」って終わっちゃう。そういう県民が、そういう知事を選んだ。もう悔しくもなんともないよ。「そういうことですか」と。
──広瀬さんのところにも、メディアが殺到したと聞いていますが。
広瀬 ぜんぜん殺到してないよ。開票の日だけね。その日の20時に開票するよね。開票した時点で結果が出るわけ。でも、出口調査で17時にはわかっていた。
──開票の3時間前にわかっているものなんですか
広瀬 そう。わかるけど、開票が始まるまで発表しないだけ。「そういうことなんで、20時に言葉を用意しておいてくださいね」って。わかりましたと。でさ、翌日の新聞を見てびっくりしたんだけど「涙ぐみながら報告している広瀬候補」って書いてある。
──泣いている写真ではないですよね?
広瀬 もちろん泣いていないんだけど、ちょっとうつむいたところに「涙ぐみながら」とキャプションが入ったら、泣いているように見えるでしょ?
──まあ、確かに(苦笑)。
広瀬 「私の実力が足りませんでした。皆さんお疲れ様でした。さよなら」と。それ以外に言うことないでしょ?「自民党がこんなに弱いと思っていませんでした」とは言えないでしょ? だから「ありがとうございました」って、言うほかなかったよね。