宇都宮徹壱ウェブマガジン

マンチェスター・シティを愛し続けた30年の物語 島田佳代子(ライター&インタビュアー)<1/3>

 欧州クラブによる夏のジャパン・ツアーが終わった。今年は6月のFCバルセロナを皮切りに、セルティック、バイエルン、マンチェスター・シティ、インテル、PSG、そして(サウジアラビアだが)アル・ナスルが来日。そんな中、最も注目を集めていたのが、今季のプレミアリーグとFAカップ、そして欧州CLのトレブル(3冠)を達成した、マンチェスター・シティであろう。

 シティといえば、私がまず思い浮かぶのがペップでもハーランドでもなく「かよりん」こと島田佳代子さんである。かよりんは、Jリーグ開幕直前の19934月に来日していたシティと出会い、すぐにファンになったという。以来30年、ずっと彼女はシティファンであり続け、1999年から2007年までは英国在住ライターとして、現地のフットボール情報を発信し続けてきた。

 帰国後、代表歴のあるラガーマンと結婚して、2人のお子さんにも恵まれた。その間、ライフステージの変化もあり、ライターとしての活動をセーブする時代が続く。そして、中学時代にシティと出会ってから30年後の今年、彼女はトルコのイスタンブールで開催されたCL決勝を現地観戦。初のヨーロッパ王者とトレブル達成の瞬間を目撃することとなる。

 かよりんのキャリアをご存じない方は、2人の子供を預けて「飛んでイスタンブール」した彼女に、あるいは違和感を覚えたかもしれない。けれども彼女があの日、あの場所にいたことは、30年にわたってシティを愛し続けたことの「必然」だったように、私には思えてならない。さっそく当人に、あの日の出来事と、これまでの30年について語ってもらおう。

【編集部より】クレジットが入ったものとパンフレットを撮影したものを除き、今回の写真は島田佳代子様にご提供いただきました。

(c)tete_Utsunomiya

決勝戦のチケットを持たず2日前にイスタンブールに出発

──まずはあらためまして、CL優勝とトレブル達成、おめでとうございます!

島田 ありがとうございます。帰国してから、何度もWOWOWで試合の映像を見返しているんですけど「私、本当にこの場所にいたんだな」って。今でも何だか夢の中にいるようです。

──2人のお子さん、中1と小4でしたっけ? お母さんひとりでイスタンブールに旅立つのも、いろいろハードルがあったと思うんですが。

島田 そうなんですよ。私、もともとバックパッカーだったんですけど、結婚してからの十数年は、ずっと大人しくしていたんですよね。夫は週末、基本的にラグビー活動なので、ひとりで旅行に行くことも、ずっと封印していたんですよ。だから最初は、CLのファイナルを現地観戦するなんて、考えていませんでした。でも、シティの決勝までの勝ち上がりを見ていると、もう優勝した姿しか想像できなくて(笑)。

──前回の決勝進出は、チェルシーに敗れた2020-21シーズンでしたよね。

島田 あの時は子供が2人とも小学生でしたし、まだコロナで海外に出るハードルが高かったからですね。実は今年の4月、久々の海外旅行で台湾に行ったんですよ。それで自分の中での「鎖国」が解けたんですね(笑)。あと、子供たちもしっかりしてきたので「行けるかな、それともTV観戦かな」って、ずっと自分の中で揺れていたんですよ。

──結局、ご家族の理解は得られたのですか?

島田 実家の両親に「トルコへ行きたいな」って、さりげなく言ったんですよ。それで「え、子供はどうするの?!」って言われたら諦めようと思ったんですけど「そう、チケットが取れるといいね。孫の面倒は任せなさい」って。

──娘がどれだけシティを愛しているか、ちゃんとご存じだったわけですね。それで、航空券を予約したのは?

島田 6月7日です。

──決勝は10日でしたよね?

島田 8日に成田発の飛行機を7日に取ったんです(笑)。独身時代、バックパッカーとしていろんな国に行きましたけど、さすがにこの距離の国際線を出発前日に取ったのは、これが初めてでしたね。ホテルを予約したのも、成田空港の搭乗手続きをしている間でした。

(残り 1951文字/全文: 3682文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

日本サッカーの全てがここに。【新登場】タグマ!サッカーパック

会員の方は、ログインしてください。

1 2
« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ