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シーズン移行問題は「ヒダリトモ革命」に何をもたらすか 雪国クラブ社長が今、考えていること(富山篇)<1/3>

 先週日曜日、J3のカターレ富山が、ファン・サポーターに向けてのタウンミーティングを行った。テーマはシーズン移行についての意見交換である(参照)

 富山の社長は、当WMではお馴染みの左伴繁雄さん。私が知る限り左伴さんは、雪国クラブの社長の中で、最もこの件について積極的に発信を続けている。こちらのnote(特に後編)は、本件に関心のある方にはぜひお読みいただきたい。

秋春シーズン制への移行について思うこと(前編)

秋春シーズン制への移行について思うこと(後編)

 このnoteに書かれた内容について、もう少し掘り下げたいと思ったので、624日の県総(富山県立総合運動公園陸上競技場)での取材翌日、左伴さんにインタビューをさせていただいたのが本稿である。こちらのコラムにも書いたとおり、この日の県総ではイベントがもりだくさん。視察に訪れていた、野々村芳和Jリーグチェアマンに対して「秋春制移行反対」の横断幕が掲げられる一幕もあった。

 シーズン移行問題については、今年に入ってJリーグ関係者やJクラブ社長に取材するたびに、決まって「どう思います?」と質問してきた。皆さん、それぞれに意見はお持ちなのだが、表立っての発言を控える傾向が見られる。そんな中、例外なのが左伴さん。自ら積極的に発信するだけでなく、ファン・サポーターに向けていち早くタウンミーティングを開催していることからも、その姿勢は明確である。

 今季の富山は好調を維持しており、現時点では昇格圏内の2位をキープするも、平均入場者数が成績に追いついていない現状がある。2021年からの「ヒダリトモ革命」を続ける中、社長自身はシーズン移行問題をどのように捉えているのだろうか? 話を伺って見えてきたのは「事は雪国クラブだけの問題ではない」という現実。どういうことなのか? さっそく左伴さんの言葉に耳を傾けたい。(取材日:2023625日@富山)

写真提供:カターレ富山

2003年の横浜F・マリノスを想起させる今季の富山

──まずは昨日の勝利、おめでとうございます。9勝3分け3敗で、ホーム負け知らずという現在の結果についての評価からお願いします。

左伴 ここまでは「予定通り」というのがあるんですよね。1試合平均勝ち点2で行けば、38試合、ほぼ間違いなく昇格できるというデータもありますので。第15節を終えて、勝ち点30。現時点では首位にいるわけですから。もちろん、口で言うほど簡単ではないですが。

──左伴さんからご覧になって、ここまで好調を維持している理由はどこにあると思いますか?

左伴 僕は強化の人間ではないんだけど、3つあるんじゃないですかね。第1の理由は、天皇杯での京都サンガF.C.戦の勝利にヒントがあるんじゃないかと思っています。J1クラブを相手に、あの試合ではリーグ戦からスタメンをGK以外の10人入れ替えていたんです。結果としてPK戦までもつれた末に競り勝ったわけですが、実は紅白戦を見ているとBチームのほうもパワーはあるんですよね。そうした良い部分を前面に押し出しての勝利でした。

──つまりBチームを出しても、遜色ない戦いができるのが今季の富山の強さであると。

左伴 そう。今年のチームは、後半に出てくる選手のクオリティが落ちなくて、しっかり勝ち点3を確保できるようになりました。終盤に失速することがなくなって、守備的にも攻撃的にも臨機応変に戦えるようにもなった。これがまず、大きいと思いますね。

──なるほど。2番目の理由はなんでしょうか?

左伴 これは横浜F・マリノスの社長時代に監督だった、岡田武史さんが重視していた「チーム一丸」ということですね。残念ながら去年までの富山は、どうしてもこれができていなかった。Aチームは「試合に出られて当たり前」、Bチームは「どんなに頑張っても試合に出られない」。こうなると、練習でのインテンシティも、なかなか上がっていかないんですよね。

──前任の石﨑(信弘)監督は、メンバー固定の傾向があったようですが。

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