宇都宮徹壱ウェブマガジン

夢の対談!「クラブ経営の大先輩」と「SNSの申し子」 左伴繁雄(カターレ富山)×えとみほ(南葛SC)<1/2>

 今週は「クラブ経営」をテーマに、カテゴリーも地域も異なる魅力的なおふたりの対談をお届けする。まず、カターレ富山代表取締役社長の左伴繁雄さん。そして南葛SCマーケティング部長のえとみほ(江藤美帆)さん。意外に思われるかもしれないが、おふたりはこれまでSNSでのやりとりはあったものの、実は今回が初対面である。

 左伴さんもえとみほさんも、当WMにはたびたびご登場いただいている。この両者がクラブ経営について語り合ったら、どんな展開になるのだろう──。そんな個人的な興味から生まれた、今回の対談企画。始まってみると、こちらの想定以上に盛り上がり、1万字の原稿にまとめるのに苦労するほどの充実した内容となった。

 本稿で語られているクラブ経営は、高尚なスポーツビジネス論ではなく、むしろファン・サポーターが「自分ごと」として受け止められる内容となっている。間もなく始まる2023年シーズン。富山と南葛のみならず、それ以外のクラブのファン・サポーターにも、ぜひ「自分ごと」としてお読みいただきたい。(20221222日、オンラインにて実施)

1/2>目次

*お互い意識していたけれども今回が初対面

*富山の「数字だけでは測れない変化」とは?

*地方からもパートナーの引き合いがある南葛

■お互い意識していたけれども今回が初対面

──年末のお忙しいところ、お時間をいただきありがとうございます。左伴さんとえとみほさんは、SNS上での交流はあるんですが、実は面識がなかったんですよね。オンラインとはいえ、今回が初対面ということでしょうか?

左伴 初対面なんだよね。SNSでしょっちゅう見かけているから、なんか初対面とは思えないんだけどさ(笑)。

えとみほ そう、お話するのは実は初めてなんです!

──本題に入る前に、お互いの印象について伺いたいと思います。まず、えとみほさんから。

えとみほ クラブ経営の大先輩ですよね。私がサッカー業界に入ったのが2018年で、栃木SCで働き始めたんですけれど、どういう方々がいらっしゃるのかSNSや書籍なんかでリサーチしていたんです。その中に当時、清水エスパルスの社長だった左伴さんがいらして、機会があればぜひ一度、お目にかかりたいと思っていたんですよ。

──左伴さんはいかがでしょうか?

左伴 2019年の6月頃だったかな。エスパルス時代に周囲に勧められてTwitterを始めたんですよ。それで、どのアカウントを参考にすればいいのか聞いていたら、ほぼ全員が「えとみほさん!」っていうんですよね(笑)。さっそくアカウントを覗いてみたら、確かに「なるほどな」と思えるような発信をしていたんです。そのうちnoteも拝見させていただいて「えとみほさんって、SNSの申し子みたいな人なんだな」と思ったんですよ。

えとみほ 恐縮です(笑)。

左伴 最初はそういう印象だったんですけど、えとみほさんのnoteを読み込んでいくうちに「この人は経営者として、ものすごくチャレンジャーの感性がある人なんだな」と考えるようになったんです。単なるSNSの先生というよりも、もっと縁を保ちたい人と思えるようになりました。これ以上言うと差し障りがあるので、このあたりにしておきますが(苦笑)。

えとみほ 本当にありがとうございます。もう、ここでお話が終わってもいいくらい()

──終わりません(笑)! えとみほさんは今年(2022年)、J2クラブから今度は関東1部のクラブに移籍します。これまたかなり、チャレンジャーな感性ゆえなんでしょうね。左伴さんも、さまざまなクラブでお仕事をされていましたが、このあたりにも共感が持てたのでは?

左伴 そうですね。横浜F・マリノスの社長時代は、優勝したら「よくやった!」で、優勝しなかったらボロカスに言われました(苦笑)。その次の湘南ベルマーレは、決して裕福なクラブではなかったから、増資をしたり借入をしたり、あとは「土下座営業」の連続。わざと台風の日に社長の自宅の前で「スポンサーになってください!」って、頭を下げに行くこともありました。清水は清水で、「サッカー王国」のプライドを持ち続けている人が多くて、それはそれで大変でした。

 そうやって、さまざまなJクラブの経営をやっていく中で思ったのが「むしろJリーグの下のハーフウェイカテゴリーのほうが、いろいろ自由に経営できるんじゃないか」って考えるようになったんです。えとみほさんは栃木SCから、ばーんと南葛に移籍したじゃないですか。そのあとのSNSの写真を見てみると、えとみほさんを取り囲む人たちの表情が温かかったんですよね。僕が富山に来たのも、実はそういったものを求めていたのかもしれない。

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