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富山で掲げられた「秋春制移行反対」の横断幕に寄せて 過去のJFA会長とは異なる野々村芳和チェアマンの姿勢

 日記にも書いたとおり、先週末は富山に行ってきた。取材した試合はJ3リーグ第15節、カターレ富山vsヴァンラーレ八戸。それ以外にも、クラブ15周年のレジェンドマッチあり、シャレン!アウォーズメディア賞の授賞式ありと、非常に盛りだくさんな一日であった。

 まずは試合から。現在J3の首位を走っているのは、鹿児島ユナイテッドFCでも松本山雅FCでもなく、カターレ富山である。ここまで93分け3敗の勝ち点30。得失点差はリーグ唯一の2桁である。この試合では2点リードしながら、残り15分の時間帯で1点差に詰め寄られ、その後も攻め込まれる時間帯が続いた。ハラハラする展開となったが、これをしのいだ富山がホーム無敗記録を更新。2位の愛媛FC2ポイント差で、首位をキープしている。

 J2経験クラブが半分以上を占めるJ3で、昇格の条件である2位以内でフィニッシュするのは容易ではない。富山が最後にJ2を戦ったのは2014年。翌2015年以降は、ずっとJ2復帰が果たせないまま9シーズン目を迎えることとなった。今季は「名将」と呼ばれるような指揮官がいるわけでもなければ、突出したタレントを揃えているわけでもない。にもかかわらず、今季の富山はなぜ好調を維持できているのか。

 久々に富山の試合を現地で見て、強く感じられたのが「一体感」。月並みのように思われるかもしれないが、J3以下のカテゴリーでの戦いにおいて、一体感は戦術以上に重要だったりする。しかも、左伴繁雄社長によれば「今季は控えの選手やベンチ入りしていない選手でも、モチベーションを維持できている」そうだ。その部分に関しては、昨シーズン途中から指揮を執る、小田切道治監督のチームマネジメントに負うところが大きいのだろう。

 実は小田切監督、トップチームの監督は今回が初めて。それでも地元出身であり、YKK APと富山での選手経験がある。現役引退後も富山に残り、育成年代のコーチや監督を経て、2021年からヘッドコーチ、そして昨年9月に監督に昇格した。ちなみに富山の前監督は、今季から八戸を率いる石﨑信弘監督であり、その意味でもこの日の勝利は特別な意味を持っていた。

 ちなみに、この試合のスターティングイレブンのうち、FWの高橋駿太と松岡大智、そしてMFの佐々木陽次(素晴らしい先制ゴールを挙げた)は、いずれも富山出身。左伴社長はことあるごとに口にしてきた「真の県民クラブに」という目標に、また一歩近づいたのではないか。この「一体感」が今後も持続されれば、10シーズンぶりのJ2復帰も夢ではないのかもしれない。

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