宇都宮徹壱ウェブマガジン

『もえるバトレニ』著者とfootballista編集長が語る サブスクは未来のサッカー文化を支えるか?<3/3>

『もえるバトレニ』著者とfootballista編集長が語る サブスクは未来のサッカー文化を支えるか?<2/3>

ソル・メディアが意欲的なサッカー本を出し続ける理由

──ネットメディアの話から、再び紙メディアと書籍について語り合いたいと思います。フットボール批評が休刊になったり、エル・ゴラッソも新聞発行を止めてしまったり、今年に入ってから紙メディアへの逆風がさらに顕著になっています。そうした中、footballistaの版元であるソル・メディアが、意欲的な書籍を出し続けていることは、ある種の奇跡のようにも感じられるのですが、浅野さんご自身は「紙へのこだわり」は持っているのでしょうか?

浅野 雑誌や書籍は好きですが、動画やSNSを組み込めるなど、ウェブにはウェブの良さがあります。それぞれのメディアに合った形で、質の高いコンテンツを提供していくべきだと思いますし、それがブランドイメージにつながっていくという認識です。もちろん売上も大事ですから、まったく勝機がないものは出せませんが、ブランドイメージを積み重ねることで、チャレンジできる機会を生み出していきたいとは考えています。

長束 この本自体、ものすごいチャレンジだと思うんですけど(笑)。

──長束さんはカンゼンから『東欧サッカークロニクル』を、東洋館出版からモドリッチのキャリアを描いた翻訳本の『ルカ・モドリッチ自伝 マイゲーム』を、それぞれ上梓しています。今回、ソル・メディアから初めて書籍を出してみて、いかがでしたでしょうか?

長束 まず「自分の希望がここまで通るのか」というのが衝撃でしたね。担当編集者の赤荻さんは、すごくよくコミュニケーションを取ってくれていましたし、デザイナーの鈴木彩子さんも「ラブリーな感じで」とだけ希望をお伝えしたら、素晴らしいカバーに仕上げていただきました。加えて、僕がこれまで撮りためてきた写真を反映することができたので、本当に嬉しかったです。ですから、書き手としては100点満点。あとは売れてくれることを願うばかりです。

浅野 これほどマニアックなテーマの本が、どれだけ売れるかは正直わからないです。けれども前提として、長束さんにクロアチア代表に対する常識を超えた愛情と熱量があること。ワールドカップ全7試合のレビュー記事を書いていただいて、その結果として3位という大団円に終わり、記事へも大きな反響があったこと。さらにクロアチアには育成理論、移民選手のスカウティング、時代による愛国心の変化など、いくつも興味深いテーマがあったこと。これらを踏まえて「書籍として十分に成立する」という確信はありました。

長束 本を出させていただくにあたって、著者として遵守しようと決めていたことがあって、それは「日本サッカーはクロアチアを見習うべき」なんて絶対に書かないことです。海外系のライターには、そうした傾向が多かれ少なかれあるんですが、そこには絶対に与しないと。

──まえがきではっきりと書かれていましたよね。私は長束さんの決意表明と受け止めました。

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