松本山雅FCのメッセージが凝縮された一冊 オフィシャルイヤーブック2023を考察する
「宇都宮さん、今年も無事に完成しました!」
3月19日のニッパツ三ツ沢球技場での取材後、撤収しようとしていた私に声をかけてくれたのは、松本山雅FC広報の丸山浩平さんである。何が完成したかといえば、2023年のオフィシャルイヤーブック。ファン・サポーターの方はご存じだろうが、かれこれ10年近く、私は山雅のイヤーブックでコラムを寄稿させていただいている。
私が山雅に最も密着していたのは、JFL時代の2011年。1年間にわたって山雅を追いかけて、翌12年に『松本山雅劇場 松田直樹がいたシーズン』を上梓している。2012年に山雅がJクラブとなって以降は、時おりアルウィンを訪れることはあっても、取材時の熱量は2011年ほどではなかった。にもかかわらず、イヤーブックへの寄稿依頼が途切れることはなかった。
最初に掲載していただいたのが(記憶に間違いがなければ)、山雅が初めてJ1を戦うことになった2015年のイヤーブック。当時の原稿から引用しよう。
かくして、今季15年シーズンをJ1で戦うこととなった山雅だが、いささか心配していることもないわけではない。戦力面以外でも、J1というこれまでのカテゴリーでは想像もつかないような殺伐としたリーグで戦うことに、若干の不安がないわけではないからだ。
特に、集客面で張り合う浦和レッズやアルビレックス新潟やFC東京、あるいはマツ(註:松田直樹)のことで深い因縁ができてしまった横浜F・マリノスとの対戦で「かわいがり」を受ける可能性は十分にあると思う。そんなことを考えると、私の中では今でもJ1昇格は「ちょっと早すぎたんじゃないか」と思ってしまう。(中略)
とはいえ、ここは「時期尚早と言う人間は、百年経っても時期尚早と言う」という、初代Jリーグチェアマン川淵三郎氏の至言を思い出すべきなのだろう。大丈夫、どんなに殺伐としたリーグであっても、そして強豪との連戦で負けが続いたとしても、山雅は山雅らしさを失うことなく、「またアルウィンに来よう!」と思わせるようなサッカーを見せてくれることだろう。
ところで皆さんは、サポートクラブのイヤーブックを、じっくりと読み込むだろうか? 当WMでは以前、「WMイヤーブック大賞」という企画を試みたことがあり、クラブによってスタイルがさまざまであることを実感した。また同じクラブのイヤーブックでも、シーズンによって方向性が微妙に変わることも、コアサポなら周知のとおりだろう。
で、今年の山雅のイヤーブック。これがJ3クラブとは思えないくらい完成度が高く、しかも興味深い内容となっていた。さらに読み込んでいくと、クラブの現状と目指すところが明確に見えてくる。そう思えた理由を以下、他サポの方にもわかりやすく書き記すことにしたい。
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