宇都宮徹壱ウェブマガジン

ブックライターであり続けて、本当によかった! 久々の新著で感じた「ネットメディアとの違い」

 9月になった。先月の私は「不要不急の取材」は極力控えて、11月発売予定の書籍の準備に多くの時間を割いてきた。結果として、本編の15章分の原稿が揃ったのはうれしい限り(もちろんブラッシュアップはこれからだが)。装丁の打ち合わせも終わり、カバーのデザインもうっすら見えてきた。そして、ずっと悩みに悩んだタイトルも、ようやく決定。今はまだ発表できないが、作品の方向性をイメージしていただくために、現時点での副題はお知らせしておこう。

Jクラブが「ある土地」「ない土地」の物語』(仮)

 今回の作品は、4年前に上梓した『サッカーおくのほそ道』の続編と位置づけている。この時の副題は『Jリーグを目指すクラブ 目指さないクラブ』。今回も全国を旅しながらJFLや地域リーグ、さらには県リーグで活動する、さまざまなクラブにフォーカスしている。ただし本作は、クラブがよって立つ「土地」にこだわってみた。Jクラブが「ある土地」にも「ない土地」にも、それぞれに土着のフットボールの物語がある。それらのひとつひとつを掘り起こし、「時代の記録」へと昇華させていくのが本作の目指すところだ。

 具体的にJクラブが「ない土地」でいうと、本作では宮崎、福井、奈良、三重の各県が登場する。これらJの空白地帯が、フットボール不毛の地かと言えば、まったくそんなことはない。宮崎や三重ではJFLのダービーが行われているし、全国リーグを戦うクラブがない福井には、サウルコス福井から福井ユナイテッドFCへの「死と再生の物語」がある。おそらくは「Jクラブがなかった」という、ただそれだけの理由で、これらの土地のフットボールの物語が全国的に知られることはなかったのだろう。

 一方で、すでにJクラブが「ある土地」には、興味深いトレンドが見て取れる。すなわち「第2のJクラブを目指す」動きが、全国各地で起こっていることだ。本書に登場するクラブでいえば、いわきFC(福島)、FC今治(愛媛)、北海道十勝スカイアース(北海道)、そして福山シティFC(広島)。「Jを目指す」とは明言していないものの、ここにコバルトーレ女川(宮城)やFCマルヤス岡崎(愛知)を加えてみてもいい。県内第2の(あるいは、より小規模な)都市にも「Jクラブがあっていい」という、時代の変化が伝わってくるではないか。

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