宇都宮徹壱ウェブマガジン

【無料公開】マスコット総選挙は「オワコン」なのか? 10回で終了したAKB48選抜総選挙から考える<2/2>

マスコットを大人メインで消費させてよいのか?

──だじゅうるさんに聞きたいんですけど、マスコット総選挙って今のままでいいと思います? あるいは、どこを変えるべきだと思います?

だじゅうる ここまでの議論を聞いていて、総選挙のフォーマットは残してもいいんじゃないかなって思いました。クラブ側に負担となっているのは明らかですけど、総選挙が近づくたびに普段は見られない動画やコンテンツが上がってくるのは、ファンとしてはまあまあ美味しいんですよ(笑)。

 総選挙以外の部分でいうと、スーパーカップの時にマスコットと交流できる、もふチケってあるじゃないですか。いつもだったら、フリーグリーティングができるお手頃チケットがあったんですけど、今年は感染対策を考慮して高額な(全マスコットとの)撮影チケットだけになってしまったんですよね。つまり、それだけの出費が可能な大人限定になってしまったのは、ちょっと残念だなって思いました。

大場 それに関して言うと、もふチケも総選挙の投票も、どちらも大人向けじゃないですか。子供はSNSで毎日せっせと投票するとは思えないし、もふチケに1万5000円も払えないですよ。しかも1万5000円のチケットは、上限が40枚なので60万円。Jリーグのビジネスとして考えたら、そんなに旨味はないだろうし、むしろ本末転倒だと思うんです。ここはぜひ、最近の特撮モノを見習ってほしいですね。

──大場さんはコロナ禍以降、仮面ライダーにハマりまくっていますよね(笑)。

大場 そうなんです(笑)。仮面ライダーとか戦隊モノとか、日曜の朝にやっているコンテンツは、子供向けというのが前提なんです。私のように大人がハマるケースもあるんですが、特撮のイベントもあくまでも子供向け。ただし関連商品については、同じアイテムで子供向けと大人向け、両方を売り出しているものもけっこうあるんですよね。

 たとえばライダーのフィギュアでも、1000円もしないものもあれば高額なものもある。変身ベルトもそう。安いものから数万円くらいのものまであって、どんなに高価な商品でも、ネットで売り出されたら瞬殺ですよ(笑)。大人からはしっかりお金を取るけれど、子供向けのものは安価でたくさん作って、簡単に買えるようにしてある。両方を満たしいているんですね。

──すごいですね。高額のフィギュアやベルトを購入している層というのは、単なるオタクではない大人のファンということですね?

大場 そうです。そもそも今のライダーシリーズって、オダギリジョーが主役をやったクウガが平成ライダーの始まりで、それから20年以上が経っているんですよ。それを見ていた子供たちは、すでに大人になっている。今のライダーの俳優さんたちも「子供時代に見ていたライダーシリーズに出演できて光栄です」と言っているわけです。

 話を戻すと、もともとJのマスコットは子供向けだったはずです。それがいつの間にか、大人と子供の両方を満たすのではなく、大人メインで消費してもらうような提供をJリーグはしているんですよね。もふチケに1万5000円を出している人たちが、20年後にはどうなっているのかって話ですよ。

──まあ、みんな老人になっていますよね(苦笑)。だからこそ、子供たちへのタッチポイントも、きちんと作っておかないとまずいという話ですね?

大場 そうしないと彼らが大人になった時に、Jリーグにお金を落としてくれないですよ。もともと子供向けのコンテンツに、大人が食いつくのは自由だと思うのですが、それを提供する側はブレないようにしないといけない。そのことを私は、特撮から学びました(笑)。それぞれの各クラブはブレていないと思うのですが、Jリーグは少しブレてるんじゃないかなって、最近は感じています。

岡田 将来のJリーグのファンを獲得するためには、もっとマスコットを活用すべきじゃないかと、大場さんのお話を聞いて思いました。それと、サッカーの本筋とは違うところからお客さんを引っ張ってくれるのも、マスコットの強みですよね。それだけのポテンシャルを最大限に発揮できるのが、本当に総選挙なのかというところは、もう少し議論があってもいいと感じました。それこそ、Jリーグアウォーズで表彰するというのも、アイデアとしてありだと思います。

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