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【無料公開】マスコット総選挙は「オワコン」なのか? 10回で終了したAKB48選抜総選挙から考える<2/2>

自分たちのマスコットを溺愛するクラブは強い!

──総選挙の是非はともかくとして、これからもマスコットとのつながりは続いていくわけです。そこで今後、われわれが考えていかなければならないことについて、語り合いたいと思います。大場さん、いかがでしょうか?

大場 マスコットとクラブの関係は大きく2つあって、自クラブでマスコットを管理しているケースと外部委託しているケース。後者の場合だと、気軽に動画とか撮れないのかなって思っていて、そのあたりでクラブによって差が出てきますよね。それと仕事柄、気になっているのが、マスコットのイラストの権利。イラストそのものも年月が経過しているので「そろそろ見直した方がいいのでは?」と思うことはありますね。

 とりわけオリジナル10だと、イラストが作られたのが30年も前だし、マスコットのポーズイラストも数が少ないんですよね。もちろんクラブとしても、本当はマスコットのイラストをリニューアルしたいと思っているかもしれない。けれども「勝手に変えるな!」って、サポーターから反発を買う可能性もありますし、権利の問題もあるかもしれないですからね。なかなか難しい問題だと思います。

──思えば1993年の開幕に合わせて、オリジナル10にマスコットを作るように指導したのはJリーグだったわけですから、この機会に権利関係をいったん整理してもらったほうがいいかもしれないですね。

だじゅうる ちょっと話は変わりますが、僕はマスコットが活躍しているクラブがあってもいいし、そうでないクラブもあっていいと思います。無理して活躍させなくてもいいから、せめて雑に扱うことだけは止めてほしい。どこのクラブとは言いませんが「総選挙で何位以内に入らなければクビ」とかやっていたじゃないですか。

──ありましたね(苦笑)。幸いノルマはクリアしましたけれど、もし達成できなかったら、クラブはどうするつもりだったんでしょうね?

だじゅうる 本当にそう思います。あと選挙以外でも、マスコットが特に理由もなく雑にいじられているのは、傍から見ていて辛く感じられます。「いじってもいい」という合意形成があるのかもしれないですが、見ていて気持ちのいいものではないですよね。それよりも「ウチの子、可愛いでしょう?」って言われるほうが、マスコットははるかに幸せですよ。

 Jリーグではないですが、Bリーグの川崎ブレイブサンダースと京都ハンナリーズは、公式Twitterアカウントでマスコットのことをよくつぶやくんです。それも何かを告知するのではなくて、ただただ「ウチの子、可愛いでしょう?」って、ひたすらツイートしている(笑)。そういうクラブだったら、ファンはついていきますよ。僕は、自分たちのマスコットを溺愛するクラブのほうが、いろんな意味で強いと思います。

──さすが、だじゅうるさん! 本当におっしゃるとおりだと思います。タイムアップが近づいてきましたので、最後にマスコットに関して、それぞれJリーグへのリクエストをいただきたいと思います。まずは岡田さんから。

岡田 マスコットって、まだまだ掘れるところではあるんじゃないですかね。もともと日本って、キャラクタービジネスに強みがあるじゃないですか。ヨーロッパやアメリカのマスコットに比べても、Jリーグのマスコットはデザイン的にはレベルが高いですよ。もっともっとマスコットを有効活用することで、リーグの価値を高めていってほしいなって、今日の座談会に参加して思いました。

だじゅうる 僕はJリーグに対して2つ、リクエストを出したいと思います。まず、Jリーグのイングリッシュアカウントがありますが、マスコットには訴求力がありますから、海外に向けてどんどん動画を出してほしいですね。もちろん、今もかなり頑張っているとは思いますが。もうひとつはグリーティングの復活。コロナ対応で難しいところではあるんですが、マスコットはやっぱりリアルな触れ合いは不可欠だと思います。ですので、今年こそは復活を期待したいですね。

大場 私も2つあって、まずは先ほど指摘しました、著作権やイラストの整理。開幕から30年というタイミングで、クラブがきちんと有益に使えるような大胆な見直しがあってもいいのかなと思います。もうひとつは、これも繰り返しになりますけれど、子供たちへの訴求。もちろんクラブ単位では、地元の幼稚園や小学校でマスコットが活動しています。それとは別にJリーグ主導でも、もっとマスコットを活用してもいいんじゃないかって思います。

 たとえばですが、JリーグのYouTubeチャンネルがありますけど、そこに各マスコットを登場させて子供向けの英会話教室とかを配信するのはどうでしょう。皆さんご存じのとおり、今の子供たちはTVではなくて完全にYouTubeなんですよ。そこにマスコットを登場させることで、Jリーグとのタッチポイントが生まれて、大人になったらJリーグの試合に来てくれるかもしれない。もっと子供たちの視点を意識した、マスコットの戦略を考えてほしいと思います。

──それこそマスコットを使って、セサミストリートを超える世界観も作れるかもしれないですね。Jリーグはチェアマンが交代するタイミングでもありますから、マスコットについても大胆な改革を求めたいところです。岡田さん、だじゅうるさん、大場さん、今日はありがとうございました!

<この稿、了>

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