平成が終わる前に語り合う「スマホ以前」のサッカーネット論壇 ケット・シー✕岡田康宏✕UG✕宇都宮徹壱<2/2>
■幾多の人材を業界に送り出したネット論壇
──第2部に入りたいと思います。今、話していることって、たかだか10年ちょっと前の話でしかないんですが、スマートフォンやSNSが普及する以前のネット論壇は今とまるで様相が違っていたんですよね。UGさんは身をもって体感していると思うのですが。
UG やっぱりSNSがなかった頃って、ブログ主に攻撃的なコメントをしてくるやつの正体がわからなかった。今だったら、過去のSNSの発言を確認して、スルーしていいかどうか判断できるじゃないですか。でも当時は、相手がきちんと議論したいのか、それとも単なる荒らしなのか、なかなかわからなかったですよね。
ケット 僕のBBSの場合、たまに荒らし目的で2~3行のものを書いてくる人もいたんですけど、それは完全にスルーでしたね。最近の若い人はもう知らないかもしれないけど、2ちゃんねる由来の「荒らしはスルー」っていう伝統用語があって、そういうものに関してはレスをつけないで黙殺するという不文律はありました。
──サポティスタは、最盛期はかなりの読者を抱えていて、いろいろと荒らしのリスクがあったんじゃないかと思うのですが。
岡田 最盛期のサポティスタの読者数は、Jリーグの公式サイトよりは少ないけれど、クラブ単体で一番ファンの多い浦和レッズの公式サイトよりは多いくらいの規模感でしたね。ですから、荒らしが来ることは織り込み済みでやっていた部分はありました。これは余談ですが、僕は選手のインタビューをすることはほとんどないんですけど、川島永嗣選手に語学関連でインタビューしたことがあるんですね。そうしたら最初に「サポティスタ、見てますよ」と言われて、ああ、この人のことは一生悪く書けないなと思いました(笑)。
UG サポティスタで俺がビックリしたのは、日本代表の対戦カードをどこよりも早くスクープしていたことですよね。あれは衝撃的だった。
──あれは浜村さんの仕業でしょう? 亡くなった広瀬一郎さんが「これ、絶対言うなよ」って言った話が、すぐにアップされていましたけど、そういう人にオフレコ話をしてしまう広瀬さんも悪い(笑)。ところでケットさんは、顔も実名も明らかにしていないので「BBS、読んでいましたよ!」と言われることはなかったと思います。それでも身近で議論をしている人の中で、のちにプロの書き手になっていった人が多かったことについては、いろいろ思うところがあるのでは?
ケット 僕自身はサッカーの書き手になろうと思ったことはないですけど、当時やりとりをしていた人の中からプロになった人が何人も出てきたことは嬉しかったですね。有名なところでいうと『ルモンド・ドゥ・トルシエ』を主催して、のちにエル・ゴラッソを立ち上げた山田泰さん。
UG footballistaの浅野賀一さんも、サポティスタで書いていたわけでしょう?
岡田 サポティスタで書いていた、というと語弊があるかもしれませんが(笑)。あとは河治良幸さん。河治さんは当時「ヨッシー」っていう名前で書き込んでいましたよね。
──川端暁彦さんも、大学在学中から「ひしゃく」という名前で育成のレポートをネットで書きまくっていましたよね。みんな今は同業者になっているわけですが(笑)。最近の書き手については、ケットさんはどんな印象をお持ちでしょうか?
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