宇都宮徹壱ウェブマガジン

なぜ「ジャイアンツU−15」はビジャレアルを詣でたのか 佐伯夕利子『本音で向き合う。自分を疑って進む』<3/3>

「コウモリの眼」を与えてくれたビジャレアルの指導改革 佐伯夕利子『本音で向き合う。自分を疑って進む』<2/3>

あらゆる競技の視察を受け入れるビジャレアル

──この『本音で向き合う。自分を疑って進む』は、さまざまな気づきを与えてくれる本だと思います。とりわけ、ビジャレアルというクラブの先進性には、本当に驚かされるばかりです。日本でもラ・リーガは人気ありますが、どうしてもレアル・マドリードとFCバルセロナの話題ばかりになってしまうんですよね。他にも魅力的なクラブがあるだけに、何とも歯がゆいです。

佐伯 そうなんです! スペイン・サッカーを語るところで、なぜレアルやバルサばかりが主語になるのか? その時点で、スペイン・サッカーの話なんかしていないんです。スペイン国内に、何万のクラブがあるか知っています? レアルとバルサは、そのごく一部でしかないわけですよ。

──そんな中、佐伯さんが発信を続けてきたからだと思うのですが、最近は日本から「ビジャレアル詣で」をする人が増えましたよね。

佐伯 「ビジャレアル詣で」って、いい表現ですね! 私も使わせてもらおう(笑)。そうなんですよ! Jクラブの関係者ばかりではなくて、最近は他競技の方々にも訪れていただけるようになりました。ラグビー界の方々やパラリンピアン、アスリートや指導者だけではなく、スポンサー企業の方々をお迎えしたこともあります。

──それだけ幅広いと、視察の目的もいろいろなんでしょうね?

佐伯 おっしゃるとおりですが、われわれのクラブが面白いのは、どの側面からでも参考になりそうなものがあることです。クラブ経営や選手育成はもちろん、サステナビリティや地域貢献、さらには障がい者スポーツという切り口もありますから。

──そうした中、今年は読売ジャイアンツが新設する、中学生の硬式野球チーム「ジャイアンツU−15ジュニアユース」監督の片岡保幸さんもビジャレアル詣をしていました。プロ野球については不勉強なので、ジャイアンツが育成組織を立ち上げたことも知らなかったんですが、その監督がビジャレアルに注目して現地を訪れたのも驚きでした!

佐伯 プロ野球って、これまでドラフト文化でしたから「育てる」という観点がなかったと思うんです。高校なり大学なりで育った選手をスカウトして、ドラフトで引っ張ってくるという。ところが最近、野球人口は減ってきているし、子供たちも野球をしなくなっているという現実がある中、危機感を持った人たちが「球団独自で育成組織を作りましょう」と。そこで問題となったのは「どうやって」という部分だったと思うんです。

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