今だから明かす「志半ば」でJリーグ理事を退任した理由 佐伯夕利子『本音で向き合う。自分を疑って進む』<1/3>
今週は元Jリーグ理事でビジャレアルCFの佐伯夕利子さんに、このほど上梓された『本音で向き合う。自分を疑って進む』を中心にお話をうかがう。
本書が届いた時、私がまず開いたのが172ページ。佐伯さんがJリーグ理事の任期を終え、副理事長だった原博実さんとJFAハウスから御茶ノ水駅まで歩くシーンから始まる章である。佐伯さんは『異端のチェアマン』にも登場しているが、Jリーグ理事時代についての本書での記述が、個人的に気になっていたからだ。
その後は頭から読み始めて、佐伯さんのバックグラウンドやスペインでの指導者修行時代、そしてビジャレアルに至るまでのキャリアを深く理解することができた。と同時に「この時の経験がJリーグにつながるのか!」と、非常に満足のいく答え合わせにもなったのである。
本書の楽しみ方は、読む人によってさまざまであろう。佐伯夕利子という人物に興味がある人、ビジャレアルというクラブのフィロソフィやメソッドを知りたい人、スペインのサッカー事情を深堀りしたい人、あるいは指導者としての悩みの解を求めている人、などなど。いずれのニーズに対しても、本書は一定以上の充足感を与えてくれるはずだ。
私が本書を通じて知りたかったのは「Jリーグへの影響」。佐伯さんのビジャレアルでの学びは、当時のJリーグにどう反映されることが期待されていたのか。結果として、佐伯さんの理事の任期は1期2年で終わった。それでも、もう少し続いていたなら、Jリーグにどんな変化をもたらしていたのだろうか──。
その答えについては、本稿の佐伯さんの言葉から察していただきたい。そして、ぜひとも『本音で向き合う。自分を疑って進む』を手にとっていただければ、と思う。私は本書の制作にまったく関与していないが、それでも「決して損はさせない!」と断言できる。(取材日:2024年4月23日、オンラインにて収録)
■ライターとのコミュニケーションから生まれた作品
──『本音で向き合う。自分を疑って進む』、大変興味深く読ませていただきました。去年、私が上梓した『異端のチェアマン』にも、Jリーグ理事時代の佐伯さんが出てきますけれど、いろいろと答え合わせもすることができました。今回は、佐伯さんのパーソナリティを育んできたスペインという国についても、この機会にじっくり伺いたいと思います。
佐伯 ありがとうございます。実は今日(4月23日)は、国際ブックデーなんですって。ご存じでした? ですので、宇都宮さんのようなブックライターにとって、おめでたい日なんですよ!
──そうでしたか! 私はこれまで出した本は14冊なんですけど、やっぱり何冊出しても新しい本っていいものですよね。佐伯さんは、本作が3冊目でしょうか?
佐伯 そうなんです。厳密にいうと、2005年に出た『情熱とサッカーボールを抱きしめて』が湯川カナさん、そして前作の『教えないスキル~ビジャレアルに学ぶ7つの人材育成術~』と本作は島沢優子さんが「構成」として関わっていただいています。私が執筆したわけではないですが、自分の名前で出ている書籍ということでは、これが3冊目ということになりますね。
──島沢さんといえば『オシムの遺産 彼らに授けたもうひとつの言葉』の著者としても有名です。どのように佐伯さんの書籍を担当するようになったのか、以前から気になっていました。これは島沢さんからのオファーだったのでしょうか?
佐伯 そうです。最初にオファーをいただいたのは、私がJリーグの理事に就任した2020年。世界中がコロナ禍で大変だった時期で、直接だったのかJリーグを通してだったのか、ちょっと覚えていないですね。島沢さんは、ずっと私のブログやセミナーを追いかけてくれていたみたいで、それらを1冊にまとめたのが『教えないスキル』でした。かなり反響はあったみたいで、それが3冊目につながることになりました。
──私も佐伯さんのブログはよく拝読しているのですが、文章の構成力が素晴らしいなと思っています。もちろん、島沢さんがお書きになるほうが確実なんでしょうけど、ご自身で執筆するという選択肢は考えなかったんでしょうか?
佐伯 宇都宮さんの本が出る前に、村井(満)さんが『天日干し経営』をお出しになったじゃないですか。私は村井さんのように、1冊の本を書ききれるような力はないと思うんです。ブログは文字数が限られているし、多少の誤字脱字や日本語の怪しさも許されるじゃないですか(笑)。
そもそも私がブログに文章を書くのって、自己表現ではなく自分の思考の整理が目的なんです。それをプロのライターにまとめていただくことで、こうした書籍に昇華するということを教えてくれたのが島沢さんでした。
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