「コウモリの眼」を与えてくれたビジャレアルの指導改革 佐伯夕利子『本音で向き合う。自分を疑って進む』<2/3>
※<2/3>以降の写真はすべて佐伯夕利子氏提供
■個人アカウント「@puerta0」に込められた意味
──ここから『本音で向き合う。自分を疑って進む』の具体的な内容に入っていきたいと思います。本書の前半では、ビジャレアルCFにジョインする以前、とりわけスペインでの指導者修行時代のストーリーがとても興味深かったです。そんな中、佐伯さんが初めて監督として指揮を取った、CDプエルタ・ボニータというクラブが出てきます。佐伯さんのXのアカウントは「@puerta0」ですが、同じ意味なんでしょうか?
佐伯 「puerta」というのは、扉とかゲートという意味です。ですから、プエルタ・ボニータというのは「美しい扉」となるんですが、私のXのアカウントは少し違った意味です。スタジアムには、入口に番号が付いているじゃないですか。スペインで「プエルタ・セロ」というのは「ゲート・ゼロ」で、要するに関係者入口のことなんです。
──なるほど。ゼロから始まるというのは、エレベーターと一緒ですね。日本での1階は、ヨーロッパだと0階になるという。
佐伯 そうなんです。スペインに来たばかりの私も、これからキャリアを築いていくという意味でゼロだったし、指導者の資格を取って「プエルタ・セロ」の向こう側に行くというという目的も持っていました。ですから「@puerta0」というのは、そういうダブルミーニングだったんです。
──長年の謎が解けました(笑)。ところで、佐伯さんとスペインとの出会いというのは、お父上のお仕事で現地に暮らしたことがきっかけでした。もしもスペインではなく「他の国に行っていたら」って、考えたことはあります?
佐伯 ないことはなかったですね。私の父は航空会社の勤務でしたから、私が生まれたのはテヘランでしたし、その後も海外での暮らしが続いていました。日本にいたときも、いずれ海外勤務があるだろうなって、本能的に思ってしまうんですよね。結果として、父の赴任先となったスペインに行くわけですが、実はハワイか韓国か中東に行く可能性もあったんですよ。
──もし、お父上の赴任先がハワイだったら、まったく違った人生になっていた?
佐伯 というか、ハワイだったら一緒に行かなかったと思います。その時はまだ高校生だったんですが、ハワイというとサーフィンをやっているイメージしかなかったんですよ。自分も波乗りに夢中になりすぎて、のんびりした人生を歩んでしまうんじゃないかと(笑)。まあ、今から思えば、子供ゆえの偏見でしかなかったわけですが。
──では、スペインについてのイメージは?
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