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株式会社松本山雅に「異端の」元Jリーグ理事が参加する意味 社外取締役に就任する米田惠美さんについて知ってほしいこと

 このところ、松本山雅FCの動向が気になって仕方がない。

 3シーズン目となる2024年のJ3リーグは、第10節を終えて1試合少ないものの13位。46日のツエーゲン金沢とのアウェイ戦では、今季初の連敗を喫しただけでなく、1−6という受け入れがたいスコアで打ちのめされた。

 それから5日後の11日、株式会社松本山雅は神田文之社長が退任、小澤修一取締役が後任社長に就任することが発表された。「え、監督ではなく社長が交代?」と一瞬思ったが、こちらのリリースを見て納得した。以下、引用する。

株式会社松本山雅は、去る202449日(火)に定時取締役会を開催し、下記の通り役員人事を内定いたしましたので、お知らせいたします。

なお役員人事については、2024424日(水)開催予定の定時株主総会及び臨時取締役会にて正式に決定する予定です。

 つまり、この役員人事は定時取締役会で決定したものであり、トップチームの成績と(直接的には)関係ないものであった。もちろん、神田社長には忸怩たる思いはあっただろうが、まずは「お疲れ様でした」と申し上げたい。そして、バトンを託された小澤次期社長には、今は期待しかない。映画にもなった、2009年地域決勝の優勝メンバーが、Jクラブとなった山雅の再建を託されたのだ。往時を知る者としては、胸が熱くなるのも当然だろう。

 さて今回の役員人事で、個人的に注目しているのが、社外取締役に「米田惠美」の名前があったことである。拙著『異端のチェアマン 村井満、Jリーグ再建の真実』をお読みになった方ならピンと来るだろう。村井満チェアマン時代の3期目(201820年)でJリーグ理事を務めていた、あの米田さんである。当時34歳で、しかもサッカーとはまったく関わりのなかった公認会計士。まさに「異端の」元Jリーグ理事が、松本山雅の経営に参画することとなったのである。

 ご本人のこちらのポストから、社外取締役のオファーは今季開幕前からあったことがわかる。Jリーグ理事退任後は、日本フェンシング協会の常務理事や日本ハンドボールリーグの理事も務めていたが、それらも昨年の夏までにすべて退任。しばらくスポーツ界から距離を置いていただけに、まさかサッカー界、しかもJ3の山雅にジョインするとは予想外だった。

『異端のチェアマン』執筆にあたっては、米田さんに2回にわたってみっちり取材させていただき、原稿の内容に関しても丁寧にやりとりさせていただいた。以下、本書の中で語られた印象的な言葉を引用しながら、彼女の仕事に対する姿勢や考え方、さらには人となりを理解する補助線を引いていく。とりわけ山雅のファン・サポーターには、ぜひとも読んでいただきたい。

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