「ALL FOR HIROSHIMA」が果たした役割とは何か? 広島の新スタジアムをめぐるアナザーストーリー<2/3>
■なぜ市民球場跡地にスタジアムはできなかったのか?
──今回のインタビューに際して、AFHに作成した市民球場跡地にサッカースタジアムを建設する提案書を拝見しました。興味深かったのが、スタジアムに商工会議所が入るという建付けになっていたことです。「商工会議所を味方につける」という意図も感じられるのですが。
またろ それもありますが、そもそも平和団体の人たちにとって、商工会議所ビルは目の上のたんこぶみないな存在でした。というのも、原爆ドームや慰霊碑を撮影する時、市民球場の隣にあった商工会議所の黒い建物が映り込んでしまうんですよ(参照)。
──市民球場跡地には、今も商工会議所ビルは残っているんですか?
またろ 残っていますね。黒い建物なので、悪目立ちしている感じです。ですので、平和団体の人たち向けに「商工会議所をスタジアムの東側に持ってくれば、西側はすっきりして原爆ドームや慰霊碑がよく見えますよ」という提案をしていたんです。
──スタジアム建設って、さまざまな利害関係が複雑に絡まりますから、その調整ってすごく大変だと思うんですよ。だからといって、妥協ばかりすればいいという話ではない。リサーチと調整と説得のバランスがすごく大変そうですね。
またろ そうですよね。僕らも何も知らないところからスタートしましたので、いろんな人たちにアポイントを取っては、メンバーが手分けして話を聞きまくったんです。それも行政や平和団体だけではない。稼働率アップのための多機能化や複合化を目指す中で、たとえば音楽や演劇、さらには映画の関係者にも話を聞きましたね。
──広島を舞台にした映画って、けっこうありますからね。
またろ おっしゃるとおり。ですから「どんなスタジアムができれば、広島を舞台にどんな画が撮れるのか」みたいなことも聞いています。野球やサッカーといったスポーツだけでなく、音楽や美術や観光も含めて、広島にはコンテンツがいっぱいあるんですよ。それらがクロスすることで、広島を観光した人が「もう1泊しよう」とか「また訪れたい」と思っていただけることが大事なんですよね
──提案書の中にも「クロスコンテンツ」というキーワードがありましたからね。ここで確認したいことがあります。新スタジアム建設にあたっては、サンフレッチェの親会社であるエディオン、広島市、広島県、そして商工会議所という4者が主なプレーヤーだったわけです。勝手連的に始まったAFHは、この構図の中には入っていなかったものの、エディオンに近い立ち位置だったと思います。実際に共闘することはあったのでしょうか?
(残り 2135文字/全文: 3275文字)
この記事の続きは会員限定です。入会をご検討の方は「ウェブマガジンのご案内」をクリックして内容をご確認ください。
ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。
会員の方は、ログインしてください。
外部サービスアカウントでログイン
Twitterログイン機能終了のお知らせ
Facebookログイン機能終了のお知らせ