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コンサドーレサポーター目線で考える野々村体制の評価 村上アシシ(ビジネスコンサルタント・著述家)<3/3>

プロサポーターが考える北中米ワールドカップの楽しみ方 村上アシシ(ビジネスコンサルタント・著述家)<2/3>

野々村チェアマンの秋春制導入をどう評価するか?

──Jリーグの話に移りたいと思います。アシシさんはコンササポとして、野々村チェアマンの強みも弱みもよくご存じだと思います。それを踏まえて、この12年をどう評価していますか?

村上 一定の評価はできるのかなと思うんです。どうしても秋春制のことばかり語られがちですが、注目すべきはJリーグが出資して、全国各地に「KICK OFF!」というローカル番組を立ち上げたこと。実はこれ、札幌での成功事例の全国展開なんですよ。

──なるほど、先行事例があったんですね?

村上 もともとコンサは、博報堂DYメディアパートナーズと長期契約を結んでいて、北海道での地上波露出を推し進めていたんです。ノノさんが社長になった当時、スカパー!がJリーグの放映権を独占していたんですが、ローカル局での中継試合を少しずつ増やしたり、夕方のニュースに選手を出演させて「明日の試合、ぜひ札幌ドームで!」とアピールさせたりしていました。

──ノノさん自身、地元メディアに積極的に出演していたから、情報発信については常に攻めの姿勢という印象がありました。ノノさんが社長になる前は、どんな感じだったんでしょう?

村上 12年前の2012年、コンサが過去最速でJ2降格が決定したんです。その時に、たまたま札幌に帰省してローカルニュースを見ていたら、古田寛幸選手が出演していたんですよ。そこでサッカーをよく知らない別の出演者から「残留するために引き分け狙いはしないんですか?」って質問が出たんです。古田選手が「どの試合でも勝ち点3を取りに行っています」と答えたら「それをやるから負けるんでしょ?」って(苦笑)。

──何かの罰ゲームみたいな状況だったわけですね?

村上 というか、噛み合わないコントみたいなものですよ。あれを見た時「嫌がらせじゃないか」とさえ思いましたね。それくらい、当時はクラブとメディアとの間にギャップがありました。それを是正していったのが、次の年に社長になったノノさん。クラブのメディア露出を高めるだけではなく、クラブとメディアが同じ方向を向いて、Win-Winの関係を作っていくことに尽力しました。それで入場者数を増やしていって、結果を出すことで視聴率も上がっていくと。

 ステークホルダー全員がWin-Winの関係になるためには、ローカルメディアは地元クラブをフラットに報じるんじゃなくて、思い切り肩入れして応援してもいいと思うんですよ。そんな当たり前のことが、12年前まではできていなかった。それができるようになったのが、ノノさんが社長になってからだったんですよね。

──そうした札幌社長での成功体験が「KICK OFF!」の全国展開につながっていると。そこは確かに評価すべきだと思いますが、評価できない部分についてはいかがでしょうか?

村上 シーズン移行については、僕は正直「ノノさん、失敗しているな」って思いました。

──そのココロは?

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