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【無料公開】より重視すべきは「選手の自主性」? レジー(『日本代表とMr.Children』著者)<3/3>

4年に一度しか盛り上がらない」代表の楽しみ方

──いずれにせよ田嶋さんは、今大会で賭けに勝ちましたよね。JFA会長としての残りの任期を安定させた上で、後継者をじっくり育てる土台もできたわけですから。

レジー 後継者というのは、宮本恒靖さんですか?

──おそらく、そうなるでしょう。今の彼のポジションは、JFAの会長補佐兼国際委員長ですが、会長補佐というのは新設の役職でした。田嶋さんの任期は2024年まで。ツネさんは47歳になっていますから、年齢的にも問題ない。国際感覚もあるし、日本代表のキャプテンとしてワールドカップにも出場していますから、世論受けについても申し分ないでしょう。

レジー 4年に一度しかサッカーを観ない人たちからすると「僕たち私たちの考える最強のJFA」になるんでしょうね。そのうち代表監督も名波浩とか中村俊輔とかになるんでしょうか(苦笑)。そういえば、報道ステーションに本田圭佑と内田篤人が出演していた時に、本田が「日本代表の監督をやりたい」みたいなことを言っていましたね。明言したのは、初めてではないでしょうか。

──おそらく、そうでしょうね。彼はことあるごとに「指導者ライセンスなんて必要ない!」と主張していますが、ライセンスなしで代表監督に就任するための布石を、今のうちから打っている可能性も考えられますよ。本田が世論を動かして、それにJFAが追随するなんていう展開も、ロールモデルコーチの人選を観ていたら、可能性としてゼロではないと思います(笑)。

レジー 本田なら十分に考えられますよね。プレーヤーとしては大好きだったんですが、ビジネスのやり方なんかを含めて、最近は「怖いな」と感じることの方が多いです。

──同感です。そうした中で、森保さんが次のワールドカップでも指揮を執ることが濃厚と言われています(編集部註:20221228日に契約延長が決定)。2023年は11月まで親善試合しかありませんし、ワールドカップ予選もアジアの出場枠が8.5に増えることを考えれば、盛り上がりに欠けるのは仕方がないところです。そうなると、ますます「4年に一度しか盛り上がらない」という状況が続いていきそうですね。

レジー そうですね。それでも、周期的に大きなイベントがあるという点で、サッカーは恵まれているのかもしれないです。音楽業界はどうしても、盛り上がりが偶発性に左右されるので。

──確かに。思えばミスチルと日本代表の人気って、かなりシンクロしている部分があったわけじゃないですか。だからこその『日本代表とMr.Children』だったわけですが。そこで、レジーさんに最後の質問です。音楽業界から見て、サッカー人気が盛り上がるためのポジティブな要因があるとすれば、どこに見出だせそうでしょうか?

レジー 音楽に関して言えば、コロナの前と後でシーンの新陳代謝がだいぶ進みました。多くのアーティストが力を入れていたフェスが、コロナでいったんストップしてしまいます。その間に起こったのが、ストリーミングサービスとTikTokによってヒット曲が生まれる、新しい方程式の確立でした。

 それとは違う文脈でいうと、「売れるタイアップ」の基準がドラマやCMから、アニメに大きく移行したのがここ数年の流れです。グローバルな市場にもアクセスできるアニメに、メジャーなアーティストが集まって、その作品と内容面でもリンクする楽曲が生み出されるようになりました。

──なるほど。コロナ禍によってメディア環境も激変し、結果として音楽業界全体で新陳代謝が起こったと。TikTokを絡めたら、それこそ新しいファン層をつかむことも可能になったでしょうから、決してネガティブな話ばかりではないですね。

レジー サッカー界も同じことが言えると思います。今回のワールドカップで言えば、AbemaTVという新しい視聴スタイルが受け入れられて、日向坂46の影山優佳さんのような新しいスターが登場しましたよね。そういったことを考えるならば、このメディア環境の変化によって次の4年に向けて、新たなムーブメントが起こり得るんじゃないかと思います。そのメインのプレーヤーが本田圭佑だと、ちょっと怖いんですけど(笑)。

──確かに(笑)。今日、語り合ったことについて、また4年後に答え合わせをしてみたいですね。レジーさん、ありがとうございました。

<この稿、了>

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