宇都宮徹壱ウェブマガジン

Jリーグにあってジャニーズ事務所になかったもの 前チェアマンの『天日干し経営』とは何か<2/3>

Jリーグにあってジャニーズ事務所になかったもの 前チェアマンの『天日干し経営』とは何か<1/3>

アマチュアのスポーツ団体が隠蔽体質になりがちな理由

──ここからは、村井さんが会長に就任された、日本バドミントン協会の話に移りたいと思います。今さらになりますが、この話が最初に出たのが今年1月。私は村井さんが、てっきり楽隠居を決め込むものと思っていたんですが(笑)。

村井 (チェアマン退任後に)キャンピングカーを買って、日本中の温泉を回りながらサッカーを観て暮らそうと思っていたんです。そうしたら、去年の年末だったと思うんですが、バドミントン協会の不祥事の新聞記事が目に入ってきたんですね。協会職員の着服が直接的な事案だったんですが、それが公表されるまで2年近くの歳月がかかっている。「天日干し」の経営観とは真逆だったので「自分だったら、こうするのに」と思っていたんです。

──そのタイミングで、協会から「ぜひ会長に」という依頼があったと。

村井 そう、まさにそのタイミングで。実際には、共通の知人を介して「村井さん、もしもこういうオファーがあったら、どうしますか?」という打診からでした。そこで私は、まずは一度、話を聞いてみようと。そこで、以前から考えていた「スポーツ界への恩返し」ができるのであれば(オファーを)受ける、とお伝えしました。

──結果的にオファーを受けることになり、1月に副会長に、そして改選となる6月に会長に就任することになりました。ただしその間、問題の事案に関わった8人が理事として残っているとは、さすがに想定外だったのでは?

村井 本当にそうでした。「ここまでだったのか」と、あとから課題の根深さを認識しましたね。

──他に、バドミントン協会の仕事を始めて、驚いたことは?

村井 初めてオフィスに入った時でした。パーテーションで仕切られた狭いところに、67人くらいの職員が並んで仕事をしていたんです。みんなの表情が、どよんとしていたことを覚えています。翌日、すぐにレイアウト変更をしました。オフィスが3つに仕切られていて、それぞれ役員室、会議室、職員のスペースになっていたんですが、パーテーションをすべて取っ払ったんです。それが最初の「天日干し」です。

──その後のアクションは?

村井 職員全員との1on1です。ひとりひとりと向き合うことで、彼らが抱える悩みや葛藤を知ることができました。執行部と職員の間で、不信感のようなものが感じられたので「そういったものがあれば、どんどん『天日干し』にするから」と伝えたのが、着任してすぐの話でしたね。その後、飲み会をやったんですが「職員で飲みに行くのは何年ぶりだろう」なんて声も聞かれました。

──それまでのしんどさが、じわりと伝わってくる言葉ですね。あらためて村井さんにお聞きしたいのですが、なぜアマチュアのスポーツ団体は、隠蔽体質に陥りがちなんでしょうか? 

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