復刻版『フットボールの犬 欧羅巴1999-2009』 羊の島に生まれて フェロー諸島<3/3>
■ドイツにスコアレスドロー? 夢のカウントダウンが始まる
世界的なスター軍団と、辺境のアマチュア軍団との対戦は、しかし、誰もが予想もしなかったゲーム展開を見せる。圧倒的に攻め立てるドイツのシュートが、なぜか相手ゴールから嫌われ続け、刻一刻と時間が経過していったのである。
25分、フェローGKミケルセンのクリアミスを拾ったフレディ・ボビッチのシュートは、わずか数センチでポストを直撃。45分、ノイヴィルの放ったシュートは、ミケルセンのパンチングに阻まれる。すぐさまセカンドボールをボビッチがヘッドで詰めるが、DFのヨン・ロイ・ヤコブ センが間一髪のスライディングでクリア。集中砲火のようなシュートを浴びながらも、羊の島のアマチュア軍団は身体を張ってこれを防ぎ、さらには果敢に反撃に転じて見せる。フェローのシステムは、古典的な4−4−2。9人で守り、3人で攻める。カーンが守る相手ゴールまでは、とてもシュートが届きそうにないが、それにしても大健闘だ。
「フェロー! フェロー!」
友好ムードで始まった試合は、スコアレスの均衡が続く中、次第にヒートアップしていく。いつしか冷たい雨が降り出したが、フェローのサポーターの意気は、かえって燃え盛る一方だ。 相手陣内でスローインを得ただけで、万雷の拍手と声援が沸き起こる。
対するドイツの焦燥感は、誰の目から見ても明らかであった。31分にはカルステン・ラメロウが、70分にはトビアス・ラウが、いずれもイライラのあまりフェローの選手に掴みかかり、主審からイエローカードを提示される。この試合、最初のドイツの警告で、ようやく地元サポーターの闘争心に火が点き、スター軍団に向かって激しいブーイングが発せられるようになる。68分には、味方選手の負傷でフェローがいったんボールを外に出したにもかかわらず、ドイツがリスタートのボールを相手に渡すことなく攻撃を仕掛けてきたため、さらに割れんばかりのブーイングでスタジアムは埋め尽くされた。
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