宇都宮徹壱ウェブマガジン

ラーメンとサッカーの「二刀流」人生を続ける理由 元Jリーガー・盛田剛平のセカンドキャリア<1/3>

 今週は、さいたま市北区宮原にラーメン屋「盛田軒」をオープンさせた元Jリーガー、盛田剛平さんにご登場いただく。お店は「もりたらーめん研究所」という別名もあり、これを略して「もりけん」と呼ぶ。まずは、こちらの動画をご覧いただきたい。

 盛田さんは1976年生まれで愛知県名古屋市出身。駒澤大学卒業後、1999年に浦和レッズに入団。以降、セレッソ大阪(期限付き)、川崎フロンターレ(同)、大宮アルディージャ、サンフレッチェ広島、ヴァンフォーレ甲府、ザスパクサツ群馬でプレーを続ける。2017年で現役引退するまでの間、J1175試合、J2125試合、合計300試合に出場した。

 地元サポには強く印象を残しているものの、1997年のユニバーシアードを除いて代表歴はなし。そんな盛田さんが、全国区の知名度を得るきっかけが「ラーメン」だったのは、本人も認めるところだ。大学時代からのラーメン好きが嵩じて、やがて自ら考案・調理するようになり、ファンの間からは「ラーメン師範」と呼ばれるようになる。

 そんな盛田さんだからこそ、引退後にラーメン屋を開業するのは、ある意味「必然」とも言えた。もっとも、完全にサッカーから離れたわけではなく、今も浦和レッズの普及コーチとして活動しながら盛田軒のカウンターに立っている。

 このような働き方はデュアルキャリアと呼ばれているが、盛田さんいわく「ラーメンとサッカーの二刀流」。どちらが欠けても、それは盛田剛平ではない、とまで言い切る。果たしてその理由は何か? 850円の「濃厚中華」をいただいてから、お昼休みのひとときにお話を伺った。(取材日:202347日@さいたま市)

「赤やオレンジのユニフォームを着た人が来てくれますね」

── 今日はよろしくお願いします。3月5日にお店がオープンして、ひと月が経ったわけですが、お客さんの数や評判はいかがですか?

盛田 1カ月が経って、何となく落ち着いてきた感じですね。クラウドファンディングが話題になりましたし、TVの取材もあったりして、開店間もない頃はけっこうな数のお客さんに来ていただいたんです。今は数が落ち着いて、ちょっと不安を感じることもあるんですけれど、他のお店もこんな感じみたいですね。

──今日はラストオーダーぎりぎりにお邪魔しましたけど、14時前でもけっこうお客さんがいて驚きました。ところで盛田さんは、ずっとお店にいるわけではないそうですね。

盛田 浦和レッズのハートフルクラブという普及の仕事をやっていて、実はそっちのほうがメインなんですよ。そちらの仕事に影響が出ないという条件で出店できたんです。今は2週間くらい指導がないので、朝から晩までずっと店にいますけど、オープンしたばかりの時はサッカーの指導もシーズン中だったんですよね。だから朝に仕込みの手伝いをして、昼になったらサッカーの指導に行って、終わったら閉店まで働くという感じでした。

──サッカーの指導を続けながら、ラーメン屋をやるのは結構大変ですね。

盛田 「二刀流」ですよ(笑)。代表経験のない僕が、わりとメディアに取り上げられたのって、やっぱりサッカーをやりながらラーメンを極めようとしたからだと思うんです。引退しても、ラーメン屋一本ではなく、サッカーも続けていかないと自分らしくないと。浦和レッズも「そういうことなら」って認めてくれました。

──曜日にもよるでしょうけど、お客さんは1日に平均すると何人くらいですか?

盛田 だいたい120人から150人くらいですね。

──自分なりに調べてみたんですが、1100杯のラーメンを出しているお店は「繁盛している」といえるみたいですね。ここのラーメンは、800円から850円と良心的。原材料価格が高騰している中、このクオリティでこの価格は驚きです。

盛田 僕はこれまで、けっこうな数のラーメン屋さんに通ってきたので、ひとりの客として「これくらいの値段ならいいな」というのがあったんです。周りからは「低めの値段にすると、なかなか上げられないよ」ってアドバイスを受けたんですけど、当面はこの値段で頑張ります。

──客層は浦和や大宮のサポーターが多いですか?

盛田 おかげさまで、赤やオレンジのユニフォームを着た人が来てくれますね。この間はジュビロのユニを来た人も。ありがたいことですよね。サッカーつながりで「あの盛田がラーメン屋を始めたんだって」みたいな感じだったと思います。

──そういうのって、まさに長い現役生活の財産ですよね。ところで、スタッフが多いのにもびっくりしたんですけど、アルバイトは何人いらっしゃいます?

盛田 3人。自分を入れて4人ですね。このあたりは結構、企業さんのビルが多くて、昼休みになると混み合うんですよ。ですので、注文を取る人と調理のサポートと洗い場で、3人はいないと回らないんですよね。

──募集して、すぐに集まりました?

盛田 いや、そんなすぐではないです。最初はSNSで発信しました。応募してくれた人は、やっぱりレッズやアルディージャのファンの人が多かったです。あとは知り合いのつてで紹介してもらいましたけれど、まだ足りていませんね。

──では「引き続き募集中」と書いておきますね(笑)。

盛田 はい、お願いします。今は店長と僕が調理をしているんですが、僕がいなくても店長が休めるようにしたいので、フリーターの人も大歓迎です。

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