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【無料公開】ブラジル人元Jリーガーが大集合! 僕らが日本サッカーに感じること<2/2>

【無料公開】ブラジル人元Jリーガーが大集合! 僕らが日本サッカーに感じること<1/2>

<2/2>目次

*サンパイオ「日本人は監督の言うことだけに従っている」

*クルピ「2050年にワールドカップで優勝? 日本が?」

*三浦「日本では今もクルピやレオンやネルシーニョが有名」

サンパイオ「日本人は監督の言うことだけに従っている」

サンパイオ 今の話だと日本人選手は必要以上にミスを恐れ、失点や敗戦に自責の念を感じてしまうと。ヤスさんの感想は?

三浦 一概には言えないと思う。カテゴリーによって違うし、代表選手とJ2の選手とでも自ずとメンタリティは違う。ただ皆さんが指摘されているように、試合に負けて自己嫌悪になる選手というのは、僕が監督をしていた時にもいました。それと試合では「ここは絶対に守らなければ」とか「身体を張らなければ」という、個人の責任に帰する部分というのは絶対にある。そこの部分が薄いように感じる。

 僕が現役時代は、その傾向がもっと強かった。皆さんのような素晴らしい助っ人がブラジルからやってくると、どうしてもその人たちに「お任せ」という意識になってしまう。もっとも個々の責任という部分では、ブラジル人選手たちが身をもって示してくれたこともあって、そこから学ぶ日本人選手が増えていったのも事実なんだけどね。

 一方で今の日本代表を見ていて気になったのが、「ここはお前の責任だぞ!」とか「絶対に勝ちきるぞ!」といったアウトプットできる選手がいないこと。この間のエクアドル戦も、引き分けに終わったら次がないわけじゃないですか。それが頭ではわかっているのに、誰ひとりチームを鼓舞している選手が見当たらなかった。そういうのって、すごく大事だと思うんだけど、サンパイオはどう思う?

サンパイオ 個々の責任というのと、敗因を自分のせいにしてしまうのは、ちょっと違うと思うね。僕が感じているのは、日本人は監督の言うことだけに従っていることかな。もっと自分からチャレンジすることが必要だと思う。たとえばセレソン時代、僕の役割は10番の選手の守備面での負担を取り除くことだったけれど、それさえしっかりできていれば、いつも何かをチャレンジすることを心がけていた。自分からイニシアティブをもって試合に臨む姿勢が、ちょっと足りていないように感じるね。

ワシントン 今の日本代表やJのチームに必要なのは、試合を決定づける選手だと思う。確かに日本の選手は足元のテクニックはあるし、試合に向けて細心かつ入念な準備もするけれど、試合が始まれば何が起こるかわからない。そこで素早い判断をして、決めるべきところで決めないと、そりゃあ勝てる試合も勝てないよね。僕は今大会、中島翔哉をすごく評価しているけれど、そうした部分がまだ足りないと思う。

サンパイオ 僕らがJリーグでプレーして頃は、カズやゴン(中山雅史)のように、決めるべき時に決める選手がいたけどね。そういえばカレカは現役時代、練習後も残ってしばらくシュート練習をしていた。今は怪我のリスクがあるから、それを認めない監督もいるようだけど。

カレカ そうだね。全員でのトレーニングが終わってから、右、左、そして中央から、それぞれ50本ずつシュート練習をしていたよ。今の選手は、そんな時間があったらTwitterでもやっているんじゃないかな(笑)。

ワシントン 僕も現役時代は、ずっとフィニッシュの練習をしていた。けれどもそれが原因で、当時のレッズのドイツ人監督(ホルガー・オジェック)と大喧嘩になったね。「もうこれ以上、練習をしないでくれ!」と。それでも僕は自分が納得できるまで練習していたら、次の試合でスタメンから外されてしまったんだ。

 もしかしたら、監督の言っていることが正しかったかもしれない。今は過密日程だから、できるだけ選手を休ませる傾向にあるし。実際、トレーニング学の論文でも、練習時間が長すぎると怪我のリスクが高まることが実証されているようだしね。確かに科学的な見地も大事だけど、トレーニングも大事というのが僕の考えだった。

ビスマルク 今はブラジルでも、メディカルスタッフの存在は非常に重視されているよね。試合で誰を出場させるかは、メディカルスタッフと相談をしてから決めるのが当たり前になっている。僕が現役の頃は、いつも身体のどこかに痛みを抱えながら、だましだましプレーしていた。今だったら、トレーニングの負荷を下げるという選択肢もあるんだろうけど、僕らの時代にはそうした発想がほとんどなかった。

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