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【無料公開】JリーグはACLに合せてシーズン移行するべきか? クラブ側、選手側、欧州側──それぞれの視点から考える<3/3>

【無料公開】JリーグはACLに合せてシーズン移行するべきか? クラブ側、選手側、欧州側──それぞれの視点から考える<2/3>

ハンディを抱える雪国のクラブに補償はあるのか

──新潟の場合ですと、いつ頃から雪が降り始めますか?

長岡 早ければ11月には降りますよね、それほど多くはないですけれど。3月まではしっかり降りますから、シーズンインになると、まずはクラブハウスの雪かきからスタートです。自宅を出る時も、車の雪下ろしをして、それから車の周りの雪もどかさなければならない。それだけで、軽く30分はかかりますよ。出社するだけでも一苦労なのに、週末のサッカー観戦にそれだけ苦労して見に来てくれるのかというと、正直なところ不安しかないですよね。

田邊 たとえばコンサドーレなんかだと、チームが始動するのはコロナ前だったらタイ、コロナ後だと沖縄でキャンプインして、開幕後も熊本で合宿しています。いつ札幌に帰るのか聞いたら「雪次第」って言っていましたね。今年でいうと、ホーム開幕戦が終わったら、また熊本に戻っていました。つまり2月の間は、試合は札幌ドームで、トレーニングは熊本。クラブ側からしたら、相当な出費ですよ。

──選手やスタッフにしても、合宿がずっと続くことでの心理的な負担はありますよね。

田邊 もちろん。そういうハンディをコンサドーレは抱えているし、新潟や仙台、あるいは長野や松本もそうかもしれない。そういったクラブに対して、補助金を出して、自動的に雪を溶かすシステムをスタジアムや練習場に導入したとしても、それは本質的な解決方法にはならない。さっき長岡さんが言ったみたいに、雪が降ってもお客さんが来てくれるのかという問題がありますから。スタジアムに来てくれたとしても、明日の雪かきのことが気になって、試合に集中できないかもしれない(苦笑)。

長岡 ハード面でいうと、ピッチの問題についても考える必要があります。ただ雪かきすればいい話ではなく、積もってはかき出すことを続けていれば、当然ながらピッチそのものが消耗するわけですよ。ピッチの維持管理にも、コストがかさんでくるわけで、それを自治体だけにお願いするのも限界があると思います。

──結局のところ、それぞれのクラブの自助努力で何とかしてくれって話になりそうですね。ここでまた、選手の移籍に関して、田邊さんに伺いたいと思います。移籍ウィンドウが開くタイミングって、年2回あるわけじゃないですか。そう考えると秋春だろうが春秋だろうが、それほど甚大な影響がないようにも感じられるのですが。

田邊 日本の選手を高い移籍金で欧州に送り込むなら、ウィンドウは合わせたほうがいいですよね。シーズンが始まるタイミングのほうが、バジェットは大きいと思いますから。逆にシーズン途中に海外に行かれてしまうと、日本のクラブは困るわけです。

──最近だったら川崎フロンターレ、少し前なら鹿島アントラーズがそうでしたね。

田邊 選手だけでなく、監督についてもそうです。モラスさんにJクラブの監督をやってほしいと思っても、今はインスブルックで仕事をしているから、すぐには来てもらえないわけです。そういう部分を切り取って考えるなら、シーズンをヨーロッパに合わせたほうが、いろいろメリットはあると言えるでしょう。

──モラスさんはこれまで、浦和レッズやヴィッセル神戸でもお仕事をされていました。今後、Jクラブからそういったオファーがあった場合、いかがでしょう?

モラス 監督やコーチングスタッフの視点で言うと、ヨーロッパからJクラブに行くと拘束期間が長いように感じますね。1月にはキャンプが始まって、12月初旬までJリーグ、勝ち残っていれば天皇杯もあります。ヨーロッパと比べると、オフの期間が本当に短いなって感じますね。これはヨーロッパ的な発想かもしれないですが、選手やスタッフが夏の間、しっかり休みが取れるという点では、秋春制にしたほうがいいのかもしれないです。

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