【無料記事】ご隠居が心配するJリーグの未来(再) 川端暁彦(ライター・編集者)インタビュー<1/2>
■シーズン移行は「ACLに出場する4チームのため」?
――Jリーグが進めている改革についての検証を続けていきたいと思います。J3創設に続いて俎上に上げるのがシーズン移行。これまで反対の先頭に立っていた豪雪地帯のクラブが、最近になってトーンダウンというか、理解を示すようになったことが報じられていました。その経緯って、ご存じですか?
川端 要するに「ACLに合わせる」という新たな大義名分が持ちだされたのと、「日本代表の日程に合わせる」というもうひとつの大義名分と、あとは「ウィンターブレイクをちゃんと設けますよ」っていう大義名分が出てきたというところだと思います。あとは、スタジアムの改装とか、練習場の下にヒーター入れて雪を溶かせるようにするとか、そっちにお金を回しますよって話は、実は水面下で出ているのかな、という気はしています。
――なるほど。理屈としてはわかりますが、でもACLに関しては全てのチームに関わってくる話ではないですよね。やっぱり、グローバル化の波に抗えないっていう話でしょうか?
川端 ACLに関しては、グローバル化っていうよりは中東化ですよね。彼らは秋春制を採用していて、前身のアジアクラブ選手権は実際に秋春でやっていたわけです。でもJリーグやKリーグは知らんぷりして春秋でやっていて、「ACLはこっち(東アジア)に合わせろよ」と主張して変えさせたから、今度は中東が「そろそろ俺たちに合わせてくれよ」と。だから10年後、20年後くらいには、またこっちのシーズンに合わせてもらえると思うんですけど(笑)。
――でもそんなシーズンって、ころころ変えられるもんじゃないですよね。2ステージ制はすぐに戻すことは可能ですが、シーズンは一番変えたらしばらくそのままですから。
川端 賛成、反対で言ったら、僕は反対です。それでACLが犠牲になるというならそれでもいいんじゃないかとすら思っています。それよりも、たとえばJ3の小さなクラブをどう育てていくのかとか、そっちのほうがJリーグをたくましくする方法だと思いますよ。逆に、シーズン移行によって生じるコストの方が、僕には大きなものに見えます。あと、いち観戦者としては、寒い中で観るのは嫌だなっていう(笑)。
――それ、重要(笑)。とはいえ、このところの暑さは度し難いものがあるのも事実ですよね。プレーヤーにとっては過酷な状況だと思います。
川端 いやまあ、昨日の夜に埼玉スタジアムに行きましたけど、夜だとそんな気にならないですよね。暑いのは暑いですけど、試合が始まっちゃえば、気にならないレベルだと思います。あとは日本には、暑い夏の夜に出かけるって文化がありますし、逆に雪国では雪の季節はできるだけ家に篭ります。そもそも、「冬に観客が入るのか」。そこに根本的な疑問を感じますね。あとJリーグの構想は、7月開幕の5月閉幕なので、夏を避けるためのシーズン移行ではそもそもなくなっていますよね。
――なるほど。そうなるとますます「ACLのための改革」という要素が強くなっていきますね。
川端 ロシアなんかも欧州チャンピオンズリーグで勝つためという大義名分に基づいてシーズン改革をやりましたけど、結局のところ大きなクラブが勝つために中小のクラブがそのまま犠牲になりました。施設の面でも、中小の方のクラブは冬にはまともな練習ができませんから。
――日本に当てはめるなら、ACLに出場する4チームのために、残りの36チームもお付き合いするということですよね。
川端 J3を合わせたらもっとですよ。U-22選抜がどうなるかは置いといて(笑)。
<2/2>は5月4日19時更新予定