宇都宮徹壱ウェブマガジン

【無料記事】ご隠居が心配するJリーグの未来(再)  川端暁彦(ライター・編集者)インタビュー<1/2>

■J3の「U-22選抜構想」はナンセンス!

――では、実際の改革案を見てみたいんですが、とりあえず「J3構想」「シーズン移行」として「2ステージ制」と大きく3つありますよね。それぞれについて語っていきたいと思います。

川端 では、決まったものから行きますか。J3については、JFLと併存する形ではなくて、もうちょっと抜本的に違う形でやるべきだったんじゃないかな、と思っています。ただ個人的には、もしプロの3部リーグを作るなら、より上のリーグを作ってからなのかなと思っていたんですが。

――より上のリーグっていうのは、Jリーグプレミアリーグ構想のことでしょうか?

川端 そうです、つまり「J2」という名の3部リーグが誕生すると思っていたんですが、全国リーグとしてのJ3が誕生して、しかも全国リーグとしてのJFLが残ったので、これは結構意外でした。

――いずれにせよ、プロの3部リーグを作ること自体、私は反対ではないんです。ただ、プロとアマのバッファーとなるリーグはどこかで必要であるということと、残ったアマチュア最高峰のリーグが本当に全国レベルで可能なのか、今でも非常に懐疑的ですね。

川端 僕も現実的じゃないと思います。もともとJFL自体、すごく曖昧な位置づけで立ち上がったリーグなんですけど、今でもJFLの企業チームからは「いや、遠征費が厳しいっすよー」って話しか聞こえてこない。むしろアマチュアチームは地域リーグに戻して、地域リーグ決勝大会をもっと大きな大会にしてしまうとか、そっちのほうが僕は現実的じゃないかなと思うんですけども。

――その一方でJ3については、何だかいろんなアイデアを盛り込もうとしていますよね。東南アジア枠を作るとか、U-22日本代表候補を参加させるとか。長年、育成の現場を取材している川端さんからすると、このアイデアについてはどういう感想でしょうか?

川端 何でそうなっちゃうのかな~っていうのが、正直なところで(苦笑)。一番典型的なのがU-22選抜構想ですけども、申し訳ないですけども僕はナンセンスだと思います。日本サッカー協会は、自分たちがやらないと出来ないという考え方だと思うんですよね。でも結局、民がやるところを官がやっちゃっているだけの話だと思うんですよ。つまり結果として、民の役割を官が奪っている。

 たとえば齋藤学や杉本健勇なんかは、出場機会がないとロンドン五輪に出られないという危機感があって、J2のクラブに期限付き移籍して羽ばたいているわけです。でも、U-22選抜で「毎週試合あります」って話になったら、そういう決断はしないですよね? しかもJ2よりずっとレベルが低い、プロ選手が3人ぐらいしかいないチームが当たり前のリーグで。J3のことを決して悪く言うわけではないですけども、そこで彼らがエリートとして集められて、毎週試合して解散していく。それで本当に彼らは育っていくんでしょうかね?

――それだったら、降格のプレッシャーがあるJ2で揉まれたほうが、まだいろいろと得られるものがありますよね。

川端 そうですよ。さらに言えば、下部リーグの厳しいクラブ事情を知ることで「あ、こんなにオレは恵まれていたのか」と気付くとか。そっちのほうが100倍伸びますよ、間違いなく。その可能性を、なんでわざわざ摘むのかって話ですよ。僕はあの構想が出てくる事自体、すごくショックでした。そもそもこのU-22の構想って、月曜日から金曜日は所属クラブで練習して、土曜日に集合、日曜日に試合って流れなんですよね。

――そうなんですか?!

川端 そうなんです。昔、ジェフリザーブズというチームがJFLにありまして、トップチームとリザーブチームの選手の入れ替えが出来ない2重登録の問題からBチームとしては機能せず、結局JFLを脱退したんです。でも、仮にその制度が適応されるならどうだったでしょう。たとえば、現在いる35人の選手のうち、週末にトップチームで18人の選手を選んで、残りの17人をリザーブチームのメンバーとしてJ3で戦えるわけです。そのほうがコストもかからず、健全にセカンドチームを運営できるわけですよ。だったら、その制度を普通にクラブチームに認めればいいのにって、思いません?

――以前、J3に関してJリーグに取材した際、「岡山のようなセカンドチームを入れる可能性は考えていますか」と尋ねたら、まったく考えていないという答えが返ってきました。それよりも別のクラブにJ3になってもらって、Jリーグの仲間を全国に100作りたいという話でした。

川端 それはそれで、考え方としてはありだとは思います。興行ですからね。逆に言うと、「セカンドチームはJFLに登録しましょう」って話になるかもしれないですね。でも、たとえば流通経済大学なんかも、2重登録の縛りからBチームとして機能しなくなり、JFLにはいられなくなってしまった。ところが新しく協会が作るチームは、そうした縛りをなくそうとして「これでリオ五輪世代は、出場機会を得られて万々歳です」って話にしようとしている。じゃあ、彼らはいつ所属チームでレギュラーポジションを奪うんですかって話ですよ。

――なんか、本末転倒な話になりそうですね。

川端 だから僕自身、J3構想についてはそこまでネガティブじゃないんですけど、U-22選抜については、はっきり言って理解に苦しみます。それに「全国に100チーム作りたい」と言いながらU-22選抜を加えるってことは、どこかのクラブの椅子を奪うということですよね。それはもう理想と矛盾していますよ。

――とはいえ、このプランはまだ決定ではないですよね?

川端 まだアイデアレベルの話です。最終的に、理性ある決断が出ると僕は信じていますけど。

前のページ次のページ

1 2 3
« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ