宇都宮徹壱ウェブマガジン

途中出場のケイヒルには要注意! 在豪ライター植松久隆と展望する「10.11日豪戦」<2/2>

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■これまで以上に「未知の相手」となったオーストラリア

――アジアカップでのオーストラリア代表は、キャプテンのミレ・イェディナク(アストンビラ)をアンカーに置いた4-3-3というイメージですが、それは今でも変わりはないのでしょうか?

植松 そうですね。表記上は4-1-2-3が基本形です。対戦相手によっては、同じ4-3-3で守備的MFを2枚にする形もあるんですが、イラク戦では中盤がダイヤモンド型の4-4-2だったんです。で、だんだんポゼッションで優位になってくると、ボランチを1枚残して、アタッキングMFが3枚フラットに並ぶような感じで、前掛かりになっていきました。結構、フレキシブルにポジションやシステムが変わるんです。ですから、かつてのイングランドスタイルをイメージしていると、面食らうことになると思います。

――確認ですが、ポゼッション重視というアンジの目指すサッカーは、今も変わっていないのでしょうか?

植松 そこもブレていませんね。面白いエピソードがあって、ジョセップ・ゴンバというバルセロナの育成指導を経て、アデレード・ユナイテッドの監督になったスペイン人がいるんですけど、そのゴンバをオリルーズ(オーストラリアU-23代表)の監督兼A代表のコーチに三顧の礼で迎えたのがアンジだったんですよ。つまりバルサスタイルを、代表でもより浸透させたいという意図が見て取れる人事だと言えると思います。

――なるほど。アジアカップの頃からメンバーの顔ぶれも変わり、さらにスタイルがより洗練されつつあるという意味では、日本側としてもこれまでのオーストラリアのイメージをいったんリセットする必要がありそうですね。

植松 そうですね。世代交代が進んで、アンジの「つなぐサッカー」が浸透したぶん、日本にとってのオーストラリアはこれまで以上に「未知の相手」になると思います。日本で名前が知られている選手も、今はケイヒルとミリガンくらいしか残っていませんし。

――そのケイヒルですが、日本が国民レベルで苦手意識があることは、当然アンジも理解しているわけですよね。日本戦ではどんな使われ方をされると予想しますか?

植松 次のサウジ戦を見ないとなんとも言えないんですけど、おそらくケイヒルは頭から出てこないと思うんですね。

――途中から、ということですか?

植松 そうです。ケイヒルの本領って言うのは、少ない時間、少ないチャンスで決定力を発揮するという、対戦相手にとっては非常に嫌なタイプなんです。もちろん頭から出たら90分間頑張れるんですけど、これだけ若手選手が育ちつつあるわけだし、相手との駆け引きやベンチワークを考えるなら、むしろケイヒルをベンチに置いておいて「いつ出てくるんだろう」と疑心暗鬼にさせておくのが、すごく効果的だと思うんですよ。

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