宇都宮徹壱ウェブマガジン

北アイルランドという「国」の不思議さについて 短期連載『徹壱の仏蘭西日記』第6回 6月16日(木)@リール〜リヨン

■暴動から一夜明けたリールを離れて

 フランス滞在6日目。旅もいよいよ後半戦である。ここまでパリ、リールとフランス北部を回ってきたが、今日からは一気に南下してリヨン、マルセイユを巡る。リールのホテルで出発の準備をしていたら、TVのニュースが昨夜のリールでの様子を報じていた。私が現場を立ち去ったあと、イングランド・サポーターの一部が暴徒と化して、16人が負傷、少なくとも36人が逮捕される事件が起こったという(参照)。私が撮影していた21時ごろは、まだ騒ぎは平和的であった。しかし夜の帳(とばり)が下りて、アルコールが進むにつれて、とうとう暴動に発展したようだ。すでにUEFAがイングランドのFAに警告を発しているだけに、この事件がオン・ザ・ピッチにどう影響するか、非常に気になるところである。

 ホテルをチェックアウトして、重たい荷物を引きずりながらリール・ウーロップ駅に向かう。昨夜は、イングランドのサポーターたちが撒き散らしたビールで路地はベタベタ、あちこちで割れたビンやグラスが散乱していたが、今朝はすっかりきれいに清掃されていた。片付ける側は、憤懣やるかたない想いだっただろう。個人的にはイングランドの応援スタイルは嫌いではないし、無邪気に気勢を上げるぶんには目くじらを立てることはしない。しかしながら、訪れた街をゴミだらけにし、のみならず乱暴狼藉を働くような輩にはまったくシンパシーを感じないし、どんどん取り締まるべきだと思う。そもそも彼らは、愛するチームにどれだけ迷惑をかけているのか、自覚があるのだろうか。いささかやりきれない想いを胸に、2日滞在したリールに別れを告げた。

 3時間ほどの快適な鉄道の旅で、12時にリヨン・バール・デュー駅に到着。さすがは南仏、空が抜けるように青い。リヨンを訪れるのは、2003年に開催されたコンフェデレーションズカップ以来のこと。駅前の雰囲気がすっかり変わっていることに驚きつつ、近くのカフェで昼食にリヨン風サラダを食してからアパルトマンに移動する。女性のオーナーからカギを受け取る際、ふとオリンピック・リヨン女子チームの集合写真が壁に飾られてあるのに気がついた。「ファンなのですか?」と聞くと、「そうよ、サキ(熊谷紗希)は私の友だちなの。それからアミ(大滝麻未)もね。日本の女の子は、気立てが良いから大好きよ!」という答えが返ってきた。何気ない一言だが、うれしいではないか。

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