宇都宮徹壱ウェブマガジン

【無料記事】中村慎太郎 Jリーグ百年構想の向こう側へ vol.4 対談いぬゆな氏「Jリーグよ、俺たち色に染まれ!」

■「ちょっとピンとこない」今のJ’s Goal

中村 ぼくの仕事が増えるかは別として、元選手の就職体験記みたいなものがJ’s Goalの企画であると面白いかもしれませんね。

いぬゆな J’s Goalといえば、リニューアルしてからもう半年くらい経つのにまだベータ版で、コンテンツの増え方が昔の量に戻りませんね……。個性的な企画を待ってるんですけど。

中村 前回の対談で最もクリティカルだったのが、J’s Goalの意義の再発見と言語化だったと思います。Jリーグ界におけるサポーターの家であったはずのJ’s Goalが、ある日突然取り壊されたことで、リーグとサポーターの摩擦は加速していったという仮説ですね。今回の対談と皆様の反響を踏まえた上で、Jリーグに取材申請を出してみるというのが企画の意図でしたが、その柱としてJ’s Goalの今後をどうするかを我々で提案してみるというのも面白いかな、と。

いぬゆな ちょっと現状を見てみましょうか(とスマートフォンを取り出す)。久々に見ましたけど、やっぱり公式サイトみたいで面白くないですね。Jリーグとサポーターの距離を縮めるどころか、問い合わせ先すらないですね。あー、一応あるけど、Jリーグの公式サイトへのリンクですね。

中村 なるほど。サポーターとしては、この投稿フォームに率直な意見を書いても相手にされないだろうと感じてしまうし、これなら直接電話でもしたほうがマシかもしれないですね(笑)。J’s Goalの紹介文には、暫定的なものでしょうが、こう書いてあります。

J’s Goalとは

いつでも、どこでも、誰でも、もっともっとJリーグ!

Jリーグ公認ファンサイトJ’s GOALは、スタジアム TVだけではなく、もっとJリーグを身近に感じて頂くために、ウェブサービスを通じてJリーグの情報を提供するサービスです。

試合写真や記事、全クラブからのリリース等を掲載しています。

また、クラブからの依頼により告知写真や記事も掲載しております

中村 うーむ。間違ってはいないと思いますが、ちょっとピンとこないですね。Jリーグ側としても、J’s Goalをどうしていくかについては判断が出来ないのかもしれないですね。サポーターに対して過剰に権限を与えると、後で取り返しのつかないことになるかもしれないし、かといってサポーターの神経を逆なでするようなコンテンツを作ってしまうと激しく炎上してしまう。あんまり酷く炎上したらスポンサーやら関係者に説明しなくちゃいけないだろうし、余計な会議がいくつか増えるかもしれない(笑)。

いぬゆな そうですね。中の人も仕事だから危ないことはしたくないですよね(笑)。

中村 J’s Goalが炎上しないようにするには、炎上させる側の人の意見を聞いてみないことにはどうにもならないと思います。そうしない限り、デッドエンド! 行き止まりです。サポーター側に「炎上させるな! リテラシーを守れ!」と求めることもある程度は出来ますが、怒っている人に「怒るな!」と言っても聞いてくれませんからね。なぜ怒るのかを理解した上で、怒らないようにうまくコントロールしてもらわないと。

いぬゆな この本読みました?『スタジアムの感動を! J’s GOALの熱き挑戦』という本なのですが、これを読むとJ’s Goalの良さがわかりますよ。

中村 そういえば存在は知っていたけど読んでいないですね。必読ですね。早速購入したいと思います。J’s Goalに関してはこんなご意見も来ていましたよ。松本在住で、映画『クラシコ』にもほんのり出てくるスミヤマさん。連載1回目で「サポーターが拗ねている状態ではないか」という推論をしたことを受けての投稿です。

えーと“拗ねている”ことを全国的にばらされてしまったスミヤマです。拗ねているのは確かなので否定はしません懲りずにまたいっちょかませていただきます(笑)

(中略)

全部が全部「Jリーグがわるいんや!」ってつもりはさらさらありませんがありませんが、ただいぬゆなさんとの議題としてあがっていた「J’s Goal問題」では相当に怒りと悲しみを感じてモチベーションが下がったのは確かで、それが拗ねてる姿勢に繋がってるかもしれません。

J’s Goalの特色としてサポーター主体の記事がありますよね。スタグルであったり当日のイベントの取材や直接レプリカユニフォームを着た家族連れや若い女の娘たちへのインタビュー。それらは樹に例えると幹ではない「枝葉」の部分ですが私たちが一番共感できて見える場所です。

後、「ゲーフラコンテスト企画」みたいなのもありましたね。とにかく全てが下部リーグ時代においては、応援している私たちにとって「ああいうのやりたいね!」「アルウィンあんな風にしたいね!」「あだっちーを生でみたいねぇ(笑)」っていう憧れであり目指すシーンの姿だったのです。

Jリーグに参入かなって仲間たちが写真付きで紹介されたときは本当にうれしかった! これは多分下部リーグから上がったチームのサポーター共通の感想だと思います。

そしてJ’s Goal閉鎖、削除で一番がっかりというかショックだったのは「震災復興活動の記録」が一切無くなってしまったことです。5年前、悲しみに沈んだままどうしたらいいのか途方にくれていた時、全国のフットボールファミリーが連携して募金活動やボランティアに参じた。

しかし、「がんばれ日本!」と声をあげたチャリティーマッチの記録もバッサリと消されてしまった。スポーツを観るもの、応援するものとしてだけでなく、あの時社会全体に落とした暗い影を取り払えた、あの素晴らしい活動を。

中村さんがおっしゃるように「積み重ねの先に文化を築く」その芽を予算がないからってポイされちゃったんですよ。参考までに松本でのチャリティ当日の様子を書かれたブログです。

『2011/04/03 東北地方太平洋沖地震復興チャリティーマッチ(対 FC東京) [練習試合]』(空港人の棲家 松本山雅F.C. blog)

一度下された決定を覆して再開されたのであれば、もう二度とあんな愚かなことはしないで欲しいです。世界に誇れる日本のサッカーファミリーの姿をこの先絶対消さないで欲しい!

中国の野心も中東のマネーも、彼らがどれだけ巨大だろうが、私たちの国のリーグは素敵なんですよ! 負けないんですよ! 目先の金で文化を捨てないでいただきたいです。

中村 なんと熱いお便り! 親方かっこいい!

いぬゆな 本当ですね!

中村 こうやって本気でJリーグやJ’s Goalと共に生きていたサポーターがいるのに、ある日突然ブチっと断ち切ってしまったら、怒るのが当たり前だし、そりゃ炎上もしますよ。もちろん、サイトを続けて行くにはコストの問題なんかもあったとは思いますけどね。そのへんの裏事情も可能な限り出してもらって、多少は喧嘩もしながらでも、みんなで考えていくべきなんじゃないかと。例えばお金の問題であっても、極端なことを言うと誰か出してくれるかもしれません。クラウドファンディングでもある程度まかなえるかもしれないし。

いぬゆな プロセスが見えることで解決することは多そうですね。

前のページ次のページ

1 2 3 4
« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ