宇都宮徹壱ウェブマガジン

新年企画・モノクロームの世界へようこそ!過去のプリント作品を一挙蔵出し(解説付き)

2016年最初のメインコンテンツは、いつもと違った形でのフォトギャラリーを公開することにしたい。題して「新年企画・モノクロームの世界へようこそ!」。私が写真家宣言をした1997年から、デジタルカメラに軸足を置くようになった2003年までに撮影・プリントした作品を、撮影者の解説と共に紹介することとしたい。

年末、仕事部屋を大掃除してきたときに、あらためて過去のプリント作品をチェックする機会があった。写真家宣言をして今年で19年。現在のようなデジタルで仕事をするようになって13年なので、モノクロームのプリント作業をしていたのは、初期の6年間にとどまる。とはいえ、このモノクロームの時代なくして、その後の写真家人生は語れない。撮影対象との向き合い方、構図のとり方、シャッターを切るタイミング、そしてプリントの際の「画づくり」。そのいずれもが、モノクローム時代の経験がベースとなっている。

とはいえ、もはや暗室作業はすっかり縁遠くなってしまったし、モノクロームの需要もほぼ皆無である。ゆえに、これらの作品は大々的な回顧展でもやらない限り、押入れの中で死蔵するばかりであろう。そんなわけで今回は、これらの作品の一部を特別に公開することにした。「新年の余興」という面も確かにあるが、自分自身の「これまでの仕事」を棚卸しする意図もある。それではさっそく、皆さんをモノクロームの世界へご案内することにしよう。


(C)Tete_Utsunomiya

 初めてバルカンに旅立って、最初に撮影したポートレイト。被写体はスロベニア人の女の子で、ウィーンからリュブリャナに向かう列車で同じコンパートメントだった。初対面ながら、お互いに拙い英語でおしゃべりしたあとでの撮影なので、随分と打ち解けたような表情を見せてくれた。(1997@リュブリャナ近郊)


(C)Tete_Utsunomiya

 サラエボで出会った少女たちの集合写真。上の写真と違って、こちらは一期一会で瞬時に切り取った。カメラを向けられた時の子供の集中力は、それほど長くない。できるだけいい表情を撮ろうと慌てていたのだろう、構図が甘かったのでプリントの際にはかなりトリミングをしている。(1997@サラエボ)


(C)Tete_Utsunomiya

 撮影者の心象風景をとらえた1枚である。ムスリムが暮らすサラエボから、タクシーを乗り継いでセルビア人が暮らす東サラエボに移動し、ベオグラード行きのバスを待っているときに撮影。いきなり周囲の文字がキリル文字に変わり、とにかく不安で仕方がなかった。(1997@東サラエボ)

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