サンフレッチェ広島vsFC東京は中止すべきだったか 気象予報士と語る「気候変動時代のJリーグ」<1/3>
9月も半ばを過ぎ、ようやく秋の気配も感じられるようになったが、まだまだ暑い日がつづく。8月に続発した、突発的な豪雨や雷についてもしかり。2024年の夏は、雷雨や台風の影響でJリーグがたびたび中止や中断を強いられた年として、永く記憶されることだろう。
8月に限って言えば、雷雨で3試合が中止(7日の浦和レッズvs柏レイソル、24日の浦和レッズvs川崎フロンターレ、25日のカマタマーレ讃岐vs福島ユナイテッドFC)。そして台風10号の影響により、8月31日の3試合が中止となった(京都サンガF.C. vs鹿島アントラーズ、名古屋グランパスvsアルビレックス新潟、ジュビロ磐田vs横浜F・マリノス)。
一方で、試合会場は悪天候ではなかったものの、アウェイチームが台風の影響で移動中に足止めを食らうケースがあった。サンフレッチェ広島とのアウェイ戦に臨んだFC東京は、1日前倒しで移動を開始したものの、結果としてEピースに到着するまでに3日間を要することとなってしまった。
こうした気象に関するアクシデントは今後、FC東京以外のクラブでも十分に起こり得るわけで、ゆめゆめ他人事と考えるべきではない。そんなわけで今週の当WMは、昨今の気候変動の影響について、サッカーファン目線で考えるインタビューをお届けする。取材に応じていただいたのは、サンフレッチェ広島のサポーターで気象予報士の波田健一さんである。
波田さんは1969年生まれで、広島生まれの広島育ち。テレビ新広島勤務時代に気象予報士となり、オフィシャル携帯サイト「TSSサンフレッチェ広島」を企画したことからクラブとのつながりが生まれた。以降、波田さんはホームゲーム開催日の天候について、気象予報士としての専門性を活かしたアドバイスをクラブに提供している。
実は8月31日のFC東京戦についても、波田さんは広島の運営スタッフと密にやりとりをしていた。その経緯について振り返りつつ、今週は「気候変動時代のJリーグ」について考えていきたい。より多くのJリーグファンに「自分ごと」として考えるきっかけとなれば幸いである。(取材日:2024年9月2日=オンラインにて収録)
■FC東京には「本当に感謝しかありません!」
──さっそくですが、土曜日(8月31日)にEピースで開催された、サンフレッチェ広島対FC東京の試合。波田さんも現地で観戦されていたんですよね?
波田 はい、観ました。本当に申し訳ないというか、FC東京の選手、チームスタッフとサポーターの皆さんには、よくぞ来てくださいましたっていう感じですよね。
──試合は、前半に新加入のトルガイ・アルスランがハットトリック。しかし終盤にFC東京が追い上げて、3-2で終了しました。
波田 正直なところで言えば、前半は移動の疲労からか、まったく相手は動けていない印象でした。3点リードでハーフタイムを迎えた時、「あと1~2点くらい決めて勝てるな」と思ったんです。そうしたら、途中出場の小柏剛に1点を返されて、さらにはオウンゴールで1点差。何とか逃げ切ることができましたが、FC東京さんには「お見逸れしました」としか言えなかったですね。
──この試合、台風10号の影響を受けながらも、FC東京のチームが3日がかりで広島に到着したからこそ、実施することができました。確かに、当日の広島の天候は問題ありませんでしたが、新幹線などの交通機関は甚大な影響を受けています。今回のケースは中止と開催、どちらの判断が正しかったと思いますか?
8月29日の天気図。夏の高気圧の縁辺から、かなり湿った空気が東海~関東に断続的に流れ込み大雨となった。台風の動きも遅く、その状況が長く続くことにつながった(気象庁ホームページ「過去の天気図」に波田氏が加筆)。
波田 私の立場は、クラブが試合を運営するにあたって、気象がどう影響するかを的確にアドバイスするだけなので、なかなか難しい質問ですね。僕は広島サイドに情報を出していたんですが、その時点では、台風の進路はまだ定まっていませんでした。
27日、28日の時点では「開催できますよ」という話はしていたんです。ただ、さまざまなケースは想定してアドバイスをしていました。最悪の進路は、広島の西側、あるいは北側に進路を取られること。その場合、今回は大雨による影響を想定していました。
──ところが実際は、四国の南に急速にカーブして、関西と東海に被害をもたらしました。
いろいろな人を悩ませた「台風10号」の進路。気象庁防災情報のX(@JMA_bousai)8月28日8:45のポストより。
波田 そうですね。ほとんどのデータでは、広島よりも南側を通過して上陸する、というものでした。台風って、上陸すれば勢力が落ちるんです。もともと水蒸気をエネルギーとしているので、海上にいるときは勢力が落ちないんですが、陸上だとそうはいきません。
特に日本の場合、山あり谷ありで地形が複雑じゃないですか。地表との摩擦によって、必然的に消耗していくんです。あと、夏は台風の進路とスピードを決める上空の風がかなり弱かった──。今回もそうでしたので(予想は)難しかったです。
──なるほど。あんなにノロノロだった理由が理解できました。
波田 上陸してしまえば勢力も落ちるだろうし、最悪のコースさえ辿らなければ、Eピースでの試合開催は可能だと思っていたんです。ただし、昔であれば試合会場の天候のことだけ考えればよかったんですが、最近は計画運休のことも考えなければならない。
(広島への)最接近は、試合前日の30日でほぼ間違いなかった。31日は天気が回復するだろう。最大のネックは公共交通機関の運休。それを踏まえて、いろいろなシナリオを考えていました。ですから水曜日以降、サンフレッチェの運営担当とは交通機関の話ばかりしていました。
──試合の開催の可否を決めるのはJリーグですから、開催となったら広島側としては粛々と準備をするほかなかったと思います。これも難しい質問かもしれませんが、FC東京側にもアドバイスできる立場だとしたら、どんなことを伝えていましたか?
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