宇都宮徹壱ウェブマガジン

「8月に屋外スポーツができなくなる?」という未来  気象予報士と語る「気候変動時代のJリーグ」<2/3>

サンフレッチェ広島vsFC東京は中止すべきだったか 気象予報士と語る「気候変動時代のJリーグ」<1/3>

8月にゲリラ豪雨による中止が相次いだ理由

──今年は落雷やゲリラ豪雨などで、試合が中断したり中止になったりするケースが目白押しでした。私自身、取材先での中止と中断が1試合ずつ。こんなシーズンは初めてです。この要因について、私のような素人にもわかりやすく説明していただけますか?

波田 今年の夏が特徴的なのは、夏の高気圧の張り出しが若干弱いところがあって、昔と比べて中心がちょっと北に寄っているんですね。87日に、味スタでヴェルディとウチとの試合があって、豪雨で中断になったじゃないですか。

──はいはい。あの試合、私も取材していました(参照

波田 同じ日に埼スタで開催されるはずだった、浦和レッズvs柏レイソルの試合は中止になっているんですよね。この日の天気図を見ながら説明しましょう。

浦和vs柏戦が中止、東京Vvs広島が長時間中断となった、8721時の天気図。熱帯低気圧からのかなり暖かく湿った空気と上空の気圧の谷や寒気の影響が合わり、局地的な大雨となった(気象庁ホームページ「過去の天気図」に波田氏が加筆)。

波田 この日の天候が荒れた要因としては、高気圧の張り出しが中途半端で、その縁を通って南から湿った空気が入りやすいところに、しかも台風からの湿った空気がダブルで入ってきたんですね。それで東海から関東にかけて、湿った空気が入りやすい状況が長期間続いて、たまたまあの日にぶち当たったというのが、ひとつ。

──なるほど。もうひとつは?

波田 もうひとつは、この夏の猛暑で地表がものすごく熱せられていることですね。温かい空気は上昇気流を生み出して、それが湿った空気を押し上げることで、上空に入っていた寒気とぶつかる。温かいところに、冷たい氷が入ったグラスを置くと、表面に水滴がつくじゃないですか。あんな感じで、積乱雲が発達しやすくなるんですよね。

──積乱雲というのは、要するに雷雲ですね?

波田 そうです。理科の知識があれば理解していただけると思うんですが、気温が上がると水蒸気が蒸発するじゃないですか。そうなると空気中に水蒸気として、目に見えない形で溜まっていくわけですよ。そして気温が上がれば上がるほど、蓄積される水蒸気の量が増えていって、冷たい空気に急に触れると、水蒸気が一気に水滴となってドカーンと落ちてくるわけです。

──こうした短時間での積乱雲の発達は、最近の気候変動とつながっているんでしょうか?

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