サンフレッチェ広島スタジアムパーク準備室室長が語る エディオンピースウィング広島の「明確な目的」<2/3>
【編集部註】アリアンツ・フィールドの写真2点は、サンフレッチェ広島様からご提供いただきました。
■ヨーロッパのスタジアムを視察した時の違和感
──かくして、新スタジアムの建設地は中央公園広場に決まりました。ここから、どのようなスタジアムを建設するのか、という議論に入っていったと思います。その議論の前提として、海外のスタジアム視察があったと思うのですが、参考となったのがヨーロッパでなく、アメリカのMLSだったのが非常に興味深く感じました。
信江 最初はヨーロッパのスタジアムを何度か視察していました。イギリス、フランス、ドイツ、オーストリア、オランダ、ハンガリー、スロバキア。スペインはコロナ禍になってしまって、行っていませんが。言うまでもなく、どこに行っても素晴らしいスタジアムと出会うことができました。けれども、私どもの目的は「満員のスタジアムをつくること」。そうして考えた時、このままヨーロッパのスタイルを持ち込むのが正しいのか、と考えるようになりました。
──信江さんの違和感の根底にあったのは、ヨーロッパと日本におけるフットボールの社会的なポジションの違いだったと思うのですが、いかがでしょうか?
信江 おっしゃるとおりです。ヨーロッパにおけるサッカーって、文化として定着していますし、スポーツ観戦の王様という位置づけですよね。国によって多少の違いはあるでしょうけど、欧州全体で見たら、他のスポーツと比べてプライオリティが最も高いスポーツがサッカーです。
日本の場合はそこまでではない現実があります。サンフレッチェはJ1で3回優勝していて、その時はたくさんのお客さんに来ていただきました。けれども、成績が厳しい時にもたくさん来ていただけたかというと、必ずしもそうではなかった時期もありました。
──ましてや広島には、カープがありますからね。
信江 カープさんの存在も確かにありますが、サッカーという競技そのものの特性として、初めて観戦に訪れたお客様にとって楽しめるかどうかも考える必要があります。たとえば試合がスコアレスドローに終わった場合、普段からサッカーを観ている方であれば「緊張感が途切れなかったね」とか「ここでの勝ち点1は大きいよね」みたいな話ができると思うんです。けれども、サッカーという競技の魅力が奥深いものであるだけに、初めてサッカーを観戦に来られた方の場合、果たして「次も来たい」と思っていただけるかどうか。
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