代表戦の常連だった僕がゴール裏を離れた理由を話します 村上アシシ(ビジネスコンサルタント・著述家)<1/3>
今週は、ビジネスコンサルタント・著述家であり、サポーターをサポートして対価を得る「プロサポーター」でもある、村上アシシさんにご登場いただく。すでにご本人のブログでも表明しているように、アシシさんは今年のGWに故郷の札幌に家族4人でUターン移住する(参照)。その話を事前に聞いていたので、今回のインタビュー取材はトントン拍子で実現した。
アシシさんといえば、かつては日本代表のゴール裏における有名サポーターとして知られていた。ところが、である。実は2018年のワールドカップ・ロシア大会から、22年のカタール大会までの4年間、一度も代表戦を現地観戦していなかったという。この間、お子さんが生まれて育児にフルコミットしていたことも大きかったようだが、それだけが理由ではなかったそうだ。
果たしてアシシさんはなぜ、代表戦の現場から距離を置くことになったのだろうか。その真相に迫りながら、プロサポーターとしての今後の活動、さらには北海道コンサドーレ札幌との今後の付き合い方について語っていただいた。アシシさんの赤裸々な言葉を引き出せたので、最後までお読みいただければ幸いである。(取材日:2024年2月13日@東京)
■JFAはサポーターをステークホルダーと見なしていない?
──今日はよろしくお願いします。5月に故郷の札幌にUターン移住するという話を聞き、今回のインタビューが実現することになりました。近況も含めて、今回の決断の背景から語っていただきたいのですが。
村上 近況としては2番目の子供が生まれて、今は4歳と0歳なんですけれど、サッカーはほぼ観に行かなくなりましたね。子供が生まれても、スタジアム観戦を続ける人もいれば、サッカーとの関係性が薄くなる人もいると思うんです。僕自身は完全に育児にコミットしていて、サッカーと子育てのどっちが大事かっていえば、間違いなく後者でした。
──最初のお子さんが生まれたのが2019年ということで、以降の観戦頻度は?
村上 上の子が、その年の4月に生まれたんですが、それからは年に2~3回くらいスタジアムで観られればいいかなって感じで。もちろん、コンサドーレの試合はDAZNでチェックはしているんですけど、日本代表の試合はほぼ見なくなりましたね。
──それ以前、サッカーの現場から離れる自分って、想像できました?
村上 あり得るかな、と思いましたけど、夢中になっていた頃はあんまり考えていなかったですね。決定的だったのがロシア大会直前、ハリルホジッチが日本代表監督を解任された時です。僕の中では「あ、これはもうないな」って。あれで代表への熱意に終止符が打たれたというか、終わりの始まりだったと思っています。
──衝撃の発表のあと、日本記者クラブでハリルホジッチの記者会見があったじゃないですか。あの時、アシシさんもサポーター代表のような立場で会場にいたのが、実に印象的でした。
村上 本人にも直接質問しましたしね。ただ、最近はそういう突撃スタイルのような行動は、あまりやらなくなりました(苦笑)。その前にJFAの田嶋(幸三)会長が、解任の理由を「コミュニケーションの問題」で一点突破を図ったじゃないですか。今回の伊東純也の日本代表からの離脱についても「総合的に判断」という表現を繰り返していたけれど、本質的なところはまったく同じですよね。説明しているように見せかけて、実は説明責任を放棄しているという。
──あれは「天日干し」の真逆でしたよね。
村上 そう! 宇都宮さんは『異端のチェアマン』という本の中で、Jリーグチェアマンだった村井(満)さんの「天日干し経営」を描いていたじゃないですか。村井チェアマン時代のJリーグを「陽」とするなら、田嶋会長時代のJFAは「陰」だというのが僕の考えです。
特にハリルホジッチの件に関して、スポンサーに対しては何らかの説明はあったんだろうけど、ファン・サポーターが納得できる説明はなかったですよね。つまり彼らにとって僕らは、ステークホルダーとして見なされていなかったんじゃないかって思ってしまうんですよ。
──そこがJリーグとの一番の違いですよね。もちろん、日本代表とJクラブとでは、ファン・サポーターの層はかなり違いますが。
村上 村井さんにしても、今の野々村(芳和)さんにしても、ファン・サポーター像というものをしっかり把握しながら、いろいろな施策を打っているじゃないですか。野々村さんの言葉を借りるならば、スタジアムで応援しているサポーターは「作品の一部」なんですよ。加えて、この人たちが次の試合も来てくれないと、興行として回っていかない。だからチケッティングにしても告知にしても、サポーター目線でPDCAを回していくのが、当たり前になっていますよね。
──そのあたりの感覚が、JFAだと希薄になっていると。
村上 希薄どころか、サポーターのことなんてまったく気にしてないように見えます。JFAは代理店やメディアやスポンサーの方ばかりを向いていると思うんですよ。もちろん、チケットの売れ行きとか入場者数とか、あるいはグッズの売上や視聴率なんかは気にしているだろうけど、ファン・サポーターの声を拾い上げる努力をしているようには見えない。だから「僕らはステークホルダーに見られていない」って感じるんです。
■伊東純也の代表離脱に見る危機管理の欠如
──ハリルホジッチ解任がひとつの契機となって、すっかり日本代表に冷めてしまったアシシさんですが、コンサドーレの応援は変わらずに続けているわけですよね?
村上 そうです。さっきも言ったように、子育てでスタジアムにはなかなか行けてません。それでも、DAZNを見ながら応援しているし、グッズも買っているし、Yahoo!エキスパートやブログでも記事は書いています。それはコンサドーレに限らず、Jリーグそのものを僕は応援しているから、そっちの熱量は落ちていないんですよね。
──それはJリーグが、ファン・サポーターをステークホルダーと見なしているからですね?
村上 僕はそう捉えています。Jリーグに関していえば、宇都宮さんが本の中でも描かれていた、2ステージ制導入(2015年)の理由とか、エントリー問題(2021年)の原因とか、僕もリアルタイムで批判記事を書いていたんですよ。それに対する、Jリーグのリアクションを感じることがあって、そこに手応えが得られる経験を僕は何度もしているんです。
──おそらくチェアマン時代の村井さんも読んでいたでしょうね。
村上 僕もそう思います。村井さんって「今は言えないことがあるけれど、ここまでだったら説明できます」という感じで、可能な限り情報をオープンにしていましたよね。僕自身、批判することが目的ではなくて、批判した領域が何かしら改善されることがゴールなんです。
批判した結果、Jリーグはしっかり対応してくれている実感があるんですが、JFAには何ひとつ手応えがないし、無力感しか残らなかった。結果として、JFAを批判する気も失せたし、代表を現地で応援することもなくなりましたね。好きの反対は嫌いではなく無関心、とよく言いますが、その典型例ですね。
──でも、カタールのワールドカップには来ていましたよね?
村上 ワールドカップの本大会は別です。あれは完全にお祭りだし、僕自身もプロサポーターとして現地観戦に行く人たちをサポートする事業をやっていますから。でも、それ以外の代表戦は現地に行っていません。今回のアジアカップも、ぜんぜんですね。ベトナムに勝ったとか、イラクに負けたとか、そういう情報はキャッチアップしていましたけど、試合は一切見ませんでした。あとは伊東純也の離脱とか。
──伊東純也の代表離脱については、どんな感想を持っています?
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