宇都宮徹壱ウェブマガジン

雪国クラブのホンネは「美談の何が悪いのか?」 富山の左伴社長が語る雪かきボランティアの意義

※写真は取材時のものを除いてカターレ富山提供

「(ホーム開幕戦)翌日の新聞は、北日本新聞も富山新聞も1面でしたね。スポーツ面だけでなく、社会面でも取り上げていただけました」

 オンライン画面の向こう側で語るのは、カターレ富山の左伴繁雄社長である。前日の3月2日、富山は県総(富山県総合運動公園陸上競技場)にて、今季初となるホームゲームを開催。ヴァンフォーレ甲府に2-0で勝利し、8位に順位を上げた。しかし社長の表情は、決して明るくない。

「もちろん、メディアの扱いが大きいのは嬉しいんだけど、今後のことを考えるとちょっと怖いところがありますね。勝ったら騒ぐけれど、負けたら扱いが小さくなる。勝敗で露出に波が出てしまうのではなく、コンスタントに扱ってほしいとは思います」

 勝ち負けもさることながら、左伴社長が気にしていたのが集客。ホーム開幕での1万人を目指していたのだが──。

「J2の地方クラブが、試合開催前に雪かきボランティアが集結したことで、全国ニュースにもなったわけじゃないですか。それが、公式入場者数は5950人。1万人どころが6000人にも届かなくて、J2のホーム開幕戦は20クラブ中14位ですよ。正直、ショックでしたね」(参照)

 ちなみにJ3だった昨シーズン、ホーム開幕戦(3月9日、vs奈良クラブ戦)の入場者数は2132人。「3倍近くまで集客できたんだから、素晴らしいじゃないですか」という意見もあったそうだ。しかし左伴さんは「そういう問題じゃないんだよね」と厳しく釘を刺す。

「J3時代の自分たちと比べるのではなく、他のJ2クラブと比較していかないと。『勝ったからいいじゃん』とか『6000人近く来るようになったんだから』とかで満足していたらダメなんです。1万人を目指していて、6000人にも届かなかったんだから、本当はもっと危機感を持たないとね」

 集客では残念な結果に終わったものの、3連休最終日となった2月24日には、400人以上のボランティアが県総に集結。ピッチ上に積もった雪の除雪作業に汗を流していた。左伴さんも「さすがに400人は想像していなかったですね」と、初めて相好を崩した。

(残り 1674文字/全文: 2568文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

日本サッカーの全てがここに。【新登場】タグマ!サッカーパック

会員の方は、ログインしてください。

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ