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【無料公開】Jクラブ社長が個人メディアを始める理由 小島耕(水戸ホーリーホック代表取締役社長)<1/3>

シーズン移行の投票で賛成票を投じたことを発信したら

──つい先日(1214日)、シーズン移行の是非をめぐって実行委員会で投票がありました。結果は「条件付きで賛成」が52票、「継続検討」が7票、「実施しない」が1票。小島さんはいちはやく、賛成票に投じたことをXで発信していましたね。結果、ちょっとした炎上になりましたが。

小島 そうでしたね(苦笑)。普段からSNSで発信している人間が、この件に関してだんまりを決め込んでしまうのは違うと思ったんです。投票そのものは昼過ぎに終わったんですが、夕方くらいになっても誰も自分の立場を発信していなかったんですよね。

 あの日は(Jリーグがある)明治安田生命ビルに、たくさんのスポーツ紙の記者たちがいたんです。けれども、彼らが囲んでいたのは(アルビレックス新潟社長の)中野幸夫さんとか、あるいは(いわてグルージャ盛岡社長の)秋田豊さんとか、つまり反対する人か名のある人ばかり。賛成票を投じた人は、ニュースとして弱いと判断されたんだろうなって思ったんです。

──そうしたこともあって、小島さんがポストしたら、反対派から目の敵にされたと。

小島 そうです。「文章が薄い」とか「下手くそ」とか、けっこうな書かれ方でした(笑)。ただ、僕自身はこの議論の当初から賛成だったわけではなく、7票の「継続検討」に近いところからのスタートだったんです。それが議論を重ねていく中で「条件付きで賛成」のほうに近づいていったんですよね。理由はもちろん「日本サッカーの未来のため」です。でも、そういう文脈って、SNSだけだと、なかなか伝わりにくいんですよ。

──確かに。そういえば投票の前日には、スポーツ報知による「Jリーグのクラブ名に企業名使用が解禁」なんてニュースがあったじゃないですか(参照)。あの時も鹿島アントラーズの小泉(文明)さんと小島さんが「そんな話はまったくありません」とポストして、さらにJリーグが緊急リリースを出していました。このパターン、ある種の様式美状態になっていませんか?

小島 小泉さんは深夜の2時ぐらいで、僕は朝の4時半ぐらいにポストしたんですよ。「茨城は時間軸がずれているんじゃないか」って言われました(笑)。僕は明け方にトイレに入って、ライト代わりに携帯を持っていって、あのニュースにびっくりしたという感じでした。

──実際にステークホルダーからの問い合わせがあったらしいですね?

小島 具体名は出せませんが、ありました。「特定企業がクラブ名に入ることになったら、当社としても付き合い方を考え直す必要がある」みたいなことを言われましたね。実は僕自身、少し不安なところがあって「もしかしたら自分が聞き逃しただけじゃないのか?」って、少しだけ不安になりました。念のため議事録を確認したくらいです。

──結局のところ、あの報道ってなんだったんでしょうかね? いわゆる「観測気球ではなかったのか?」という意見も見ましたが。

小島 おそらくですが、外資系企業を参入させたい勢力が、背後にいるんじゃないですかね。あるいは、身売りしたいクラブがあるとか。

──報じる側からすれば「誤報を出した」ということで、相当なバッシングを受けるわけじゃないですか。何かしらのメリットがないと、ああいう記事を堂々と出せないと思いますよ。

小島 本当に不思議ですよね。ちなみにあの記事、報知の裏の一面を飾っていたんですよ。

──わざわざ買って読んだんですか?

小島 僕は都内から水戸に通っているんですが、いつも有楽町のコメダ珈琲に立ち寄るんです。コメダって朝食がわりと充実しているし、有楽町だとスポーツ紙がすべて揃っているから読み放題なんですよ。それで、いろいろ見比べることもできるので、けっこう重宝しています。

──さすが元エルゴラッソですね(笑)。小島さんには「リア経日記」で、スポーツ紙を読み比べて感じたことなんかも、定期的に書いていってほしいです。

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野々村チェアマンは個人アカウントで発信すべきか? 小島耕(水戸ホーリーホック代表取締役社長)<2/3>

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