宇都宮徹壱ウェブマガジン

「別件バウアー」なんて言っていた貴方は同世代 クライフの陰に隠れがちなカイザーだったけれど

 2024年が明けたと思ったら、もう来週から2月である。年齢を重ねると、月日の流れが加速していくのは周知のとおりだが、今年は元日から大地震や大事故が相次いだことも影響していたのは間違いない。そんな中、ふたりの偉大な元フットボーラーの訃報が相次いだ。

 15日、元ブラジル代表で長年にわたりセレソンの監督も務めた、マリオ・ザガロが永眠した。享年92歳。そのわずか2日後、7日には「皇帝(カイザー)」フランツ・ベッケンバウアーが死去している。こちらは享年78歳。世界で3人しかいない、選手と監督でのワールドカップ優勝経験者のうち、ふたりが相次いで天に召されることとなった。

 このうちザガロは、選手時代の世界制覇が1958年と62年。そして監督としての優勝は70年である。最後にセレソンを率いたのは2002年だが(ワールドカップ日韓大会直後に一時的に就任)、すでに歴史上の人物というイメージが完成されていた。それに対してベッケンバウアーは、現役時代のプレーを私はぎりぎり見ている。しかもスタジアムで。

 1977914日、東京・国立競技場でニューヨーク・コスモスと日本代表による「ペレ・サヨナラゲーム・イン・ジャパン」が開催されている。この年で引退する、ペレに代わるスーパースターとして、コスモスはベッケンバウアーを獲得。ペレとベッケンバウアーの共演を、当時小学5年生だった私は遠巻きに眺める機会に恵まれた。今にして思えば、それは私が初めて見た「大人の」「プロの」サッカーでもあった。

 それから20年くらいが経ち、私がサッカー業界(最初はTV制作会社)で働くようになると、好んで「別件バウアー」というフレーズを使う人が少なからず存在することに気がついた。「ところで別件バウアーなんだけどさ(笑)」という具合。痛い人と思われるかもしれないが、私は「この人もカイザーが大好きな同世代なんだろうな」と、密かなシンパシーを覚えたものである。

 そんなわけで今週は「私にとってのカイザー」について、同時代のスーパースターであるヨハン・クライフと比較しながら、個人的な思いを記すことにしたい。

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