宇都宮徹壱ウェブマガジン

いち早く支援に動いた南葛SCとちょんまげ隊長ツン 令和6年能登半島地震をサッカーファン視点で考える

 令和6年能登半島地震の発生から10日目となった。私が知る限り、国内のサッカー界で最初に支援のアクションを起こしたのが、関東リーグ1部の南葛SC16日から始まった「キャプテン翼CUPかつしか2024」での募金活動で、その中心には皆さんおなじみの「あの人」がいた。

「僕だけが呼びかけてもダメで、南葛やWINGS(女子)の選手たちが募金箱を持ってくれて、どんどん募金が集まった感じでした。J3よりもカテゴリーが2つ下のクラブが、いちはやく支援を呼びかけてくれたことに、僕はとても感激しました」

 そう語るのは、ちょんまげ隊長ツンさんである。南葛のスピーディなアクションも素晴らしいが、その現場に駆けつけるツンさんも素晴らしい。話を聞いたのは、その日の夕方。「これから(被災地の)輪島市に向かう」と聞いて驚いた。

「実は今日(6日)の朝に決まりました。現地にいるボランティア仲間から、避難所の食事が大変なことになっていて、いまだに『おにぎり1個だけ』という避難所もあるみたいなんです。それで『野菜たっぷりの豚汁を1000食作るから、ツンさん、力貸して!』って言われて。じゃあ、行くしかない! ということで、仲間に入れてもらうことになりました」

 決断の根拠のひとつに、地震発生から生存率が下がる「72時間」が、ツンさんの頭にはあったという。すでに被災地は人命救助から、命をつなぐ活動へとシフトしている。「食は命のライフライン」という考えから、ツンさんはこのタイミングでの能登行きを決断したという。

写真提供:えとみほさん(@etomiho

「(昨年)5月の地震の時も、能登には4往復しているので、現地の事情は理解しているつもりです。珠洲市は無理ですが、輪島市だったら高速と下道を使ってトラックで行くことができます。渋滞にかからない夜に移動して、現地到着は翌日の朝。炊き出し1000食を提供したら、すぐに帰ってきます。現地に行くことについて、反対意見があることはもちろん知っています。それでも『食は命のライフライン』というのが僕の考えですから」

 そんな中、われわれ一般的なファン・サポーターにできることは何か? すぐに思いつくのは、やはり義援金の寄付。ツンさんの意見は、こうだ。

「JリーグのTEAM AS ONEも始まりましたし、それぞれのJクラブでも募金活動が始まると思います。特にJクラブを経由することで、サッカーをあまり知らない人たちにも、Jリーグの地域密着の意義を知らしめることになりますよね。その場合、義援金は日赤(日本赤十字社)に行くことになります」

 ただし、日赤の場合「寄付先を公平にするために、どうしても時間がかかるんですよね」とも。もちろん、義援金が被災地のために使われることは間違いない。それでも、可能であれば「ボランティア団体に直接、寄付することも選択肢のひとつに加えてほしいですね」と、ツンさんは続ける。

「検索すれば、現地で頑張っているボランティア団体のFacebookHPがヒットします。活動内容を吟味して、直接振り込んでいただければ、翌日から被災地支援活動に使ってもらえます。『自分の寄付がこう使われるんだ』というのがわかりますから、寄付する側としてもモチベーションが湧きますよね。日赤への寄付が中級編だとすれば、自分でボランティア団体を見極めて直接寄付するのは上級編といえると思います」

 ちなみにツンさん、昨年に『ボランティアの教科書 できるときにできることをできる人がやればいい』という入門書を出版している。印税はすべて、東日本大震災の津波復興祈念資料館「閖上の記憶」に寄付されるそうだ。この機会に、ご購入いただければ幸いである。

 以上、長年にわたって被災地支援を続けてきた、ツンさんの言葉を共有させていただいた。ここからは、今回の地震に対するJリーグの対応について、個人的に気になっていたことを記しておくことにしたい。14日、私はこのようなポストをXに投稿している。

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