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  「今治さんは最大のライバルでありパートナー」 村上茉利江(株式会社愛媛FC取締役)<3/3>

「今治さんは最大のライバルでありパートナー」 村上茉利江(株式会社愛媛FC取締役)<2/3>

新スタジアムよりも練習グラウンドを優先した理由

──5月のFC今治との伊予決戦のあと、愛媛FCの新しいトレーニング施設「南海放送サンパーク」を見学してきました。天然芝1面とクラブハウス、倉庫などが併設されていて、特にクラブハウスがオレンジに塗り替えられていたのが印象的でした。南海放送は古くからクラブをサポートしてきたそうですが、なぜ敷地内に天然芝のグラウンドが完成したのでしょうか?

村上 もともとあの土地は、トップチームや下部組織やスクールなどの練習場として使用されていたんです。ただし芝生でなく、土のグラウンドだったんですが。それで南海放送さんが、自分たちで使いたいということで、梅津寺の人工芝グラウンドに移ったんです。再びサンパークに戻るきっかけとなったのが、先ほどお話しした2019年の赤字転落でした。

──8000万円の赤字を出して、社長であるお父上が個人資産1億円を投入したそうですね。決して美談にしてはいけない話ではありますが。

村上 当時の父は、クラブと心中するくらいの覚悟だったと思うんです。それを見た南海放送の首脳陣と協和道路の社長さんから「そこまでの覚悟があるんだったら、ウチも貢献させてもらいます」と言っていただいて。結果として、南海放送さんからは土地を格安でお借りすることができた上に、協和道路さんからも芝生を無償提供していただいたんです。

──協和道路というのは、どういう会社ですか?

村上 県内の企業さんで、関空の道路を手掛けたことで知られています。ゴルフ場の経営もされていて、新規事業で天然芝の開発にも着手したばかりでした。その天然芝というのがCOCO TURF(ココ・ターフ)」といって、土砂ではなく再生ヤシガラ(ヤシの実の繊維)で育成した新工法によるものなんです。協和道路さんからは「実証実験」という位置づけにしていただいて、それで無償提供していただくことになったんです。

──なるほど。このCOCO TURFですが、実際に使ってみていかがでしょうか?

村上 まず軽量であることと、傷んだ部分を切り貼りして手軽に修復できることですよね。しかも想像していた以上に強度があって、10日連続で選手がガシガシに使っても、ほとんど傷まなかったんですよ。そして何より一番の効果は、怪我人が劇的に減ったことです。

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